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『戦争と平和』その9 2006.9.30

こちらに書きましたが、マーガレット・ミッチェルは『風と共に去りぬ』を書く際に、この『戦争と平和』の影響を最も強くうけたと言っており、以前から、死ぬ前に1度は読んでおこうと思っていた、この『戦争と平和』を今読んだのは、『風と共に去りぬ』を読んだからと言うのが大きいです。
なので、どうしても比較してしまいますね。
特にスカーレットとナターシャは、比較しつつ読んでしまいます。
ぜんっっぜん性格は違うとも言えるのですが、かなりの共通点も見られます。
スカーレットには、常にレット・バトラーの暖かい目がありましたが、ナターシャにもピエールがいます。
以下のピエールがナターシャに言うセリフは、実に良いなあ、と思いました。

踏み慣れた道から突き落とされたら----それですべてはおしまいだ、とわれわれは考えます。ところが、そこからはじめて新しい、よい道がはじまっているのです。

可愛く細く可憐だったナターシャは、3人の子供を儲け、太って逞しく、乳母が当然のこの時代に母乳で子供を育てます。
その点も、女が仕事をするのが非常識な時代に、バリバリと仕事をして稼いだスカーレットとの共通点が見られました。
次の所なんて、良いですねえ。

「愚かしいわねえ」とふいにナターシャは言った。「蜜月だの、最良の幸福は新婚当時にあるだのと。反対よ、いまがいちばんしあわせだわ。--後略--」

また、同じ戦争ものである『チボー家の人々』も思い出したのですが、私としては、チボー家の方を強くお薦めします。

解説を読むと、トルストイは、放蕩生活にのめりこみ、酒、賭博、ジプシー女に溺れた時期もあったそうで、そんな所はヘッセを思わせられました。
また、ピエールとアンドレイは、どちらもトルストイ自身の自己の投影であるらしく、そこにもヘッセと同様の自己の分裂が見られるかもしれません。

新潮文庫 工藤精一郎・訳で読みました。
戦争と平和(1)改版
戦争と平和(2)改版
戦争と平和(3)改版
戦争と平和(4)改版

こちらの岩波文庫の新訳が、読みやすいと言う評判です。
戦争と平和(1) 戦争と平和(2) 戦争と平和(3) 戦争と平和(4) 戦争と平和(5)
戦争と平和(6)

戦争と平和

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『戦争と平和』その8 2009.9.29

次の引用は、ネタバレを避ける為に、一部伏せ字にしました。

 ******の死後、ナターシャと公爵令嬢マリヤは同じようにこのことを感じていた。二人は、頭上に垂れ下がった恐ろしい死の雲のために、精神的にちぢこまり、目をかたくつぶって、生の顔を見る勇気がなかった。二人はそのあらわな傷口を無神経に痛くさわられることから用心ぶかくかばっていた。通りを軽快に走りすぎてゆく箱馬車、食事の知らせ、どの衣裳にするかという小間使いの問い、もっと悪いのは----口先だけのおざなりの同情の言葉、そうしたすべてが鋭く傷口をこすり、侮辱のように思われて、二人がせっかくその中に身をおいて、心の耳の中でまだ鳴りやまぬ恐ろしい厳粛な合唱に聞き入ろうとつとめている、その静けさを破り、束の間二人のまえに開かれたあの神秘的な無限のかなたに目をこらすことをさまたげるのだった。

「口先だけのおざなりの同情の言葉」あるある ! 日常的にネット上でも目にしますねー。時と場合によっては、社交辞令として、これを言うのが必要な時もあるのかもしれませんが…それすら自分には実に苦手であります。
実際、お向かいのおじさんが急に亡くなられ、おばさんにバッタリ会ってしまった時、「この度は御愁傷様で御座いました」とゆーお決まりの言葉が言えなかった自分でした。_| ̄|○ ほんっっとにいきなりだったし、よく2人で歩いてるのを目にして仲良いなーと思ってたものだから、気の毒で何も言えなかったっす。
しかし、自分がどんなに親切か、やさしい人柄かを皆に知らしめたいが為に、これを言う、書く人を目にすると、ケッ ! と冷笑しながら立ち去ります。

次の一文、実にうまい表現だと思いました。

 魂の本質の破裂から生じる心の傷は、それがどんなに奇異に思われようとも、ちょうど肉体の傷と同じように、しだいにふさがってゆくものである。深い傷が癒えて、傷口の端がくっついたように思われてからは、心の傷は、肉が盛り上がると同じように、あとは生命の盛り上がる内部からなおってゆくだけである。
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『戦争と平和』その7 2009.9.28

アンドレイに共感する所が多かったので、どうしてもアンドレイのセリフや独白の引用が多くなりますが、以下もアンドレイ公爵とピエールとの会話より、アンドレイのセリフです。

「ああ、きみ、このごろぼくは生きているのが辛くなった。あまりにも多くのことがわかりかけてきたのだよ。人間は知恵の木から果実を食べすぎると、よくないのだな……---後略---」

そうなんですよね。人間知らない方が幸福だと思うことってありますよね。
しかし、たとえそれが辛い道だとしても、「知る」方を選びたいとは思います。

次はアンドレイ公爵の妹である、公爵令嬢マリヤ。
彼女の神経質で真面目な性質、共感する所も結構あります。
大事な用事の前には、私も狼狽えて、くよくよと考え過ぎる傾向があります。

公爵令嬢マリヤは、彼が言うであろう言葉と、それに自分が返す言葉とを、あれこれと思いめぐらしてみた。するとそれらの言葉が不当に冷たいと思われたり、あまりにも意味深長すぎはしないかと思われたりするのだった。彼と会う際に何よりも彼女が恐れていたのは、彼を見たとたんに、すっかりうろたえてしまって、そんな気が彼女はしていたのだが、不様な自分をさらしはしないかということであった。

これから起こる会話を想像することって、結構ありますねー。その時になったらスッカリ忘れてたりするんですが…(笑)
次の一文ですが・・・

 捕虜になってから、バラックの中で、ピエールは、人間というものは幸福のために創られているのだ、幸福は自分自身の中に、人間の自然の要求をみたすことにあり、いっさいの不幸は不足からではなく、ありあまることから生じるのだということを、頭脳によってではなく、自分の全存在によって、生命そのものによって知った。

この「いっさいの不幸は不足からではなく、ありあまることから生じるのだ」に、唸らされました。
なるほど、その通りかもしれません。

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『戦争と平和』その6 2006.9.27

◆フリーメーソン◆

*ちょっとだけネタバレ


ピエールがフリーメーソンに入る所はドキドキでした~。
そして、あの「ヨハネの黙示録」の666の獣がココに出てくるんですね !
元オカルト好きの私としては、こういう箇所は実に嬉しいですっっ。そしてこのカバラっぽい数字と文字の組み合わせのおもしろい事と言ったら !
ちゃんと表示されるか不安でありますが…。(英字と数字の所)

ピエールはフリーメーソンの同志の一人によってナポレオンに関する次のような予言を知らされた。それは使徒ヨハネの黙示録から引かれたものだった。
 黙示録の第十三章十八節にこう述べられている。『知恵はここにあり、心ある者は獣の数字を算えよ。獣の数字は人の数字にして、その数字は六百六十六なり』
 さらにその同じ章の五節にこう記されている。『獣また大言と涜言とを語る口を与えられ、四十二ヵ月のあいだ働く権威を与えらる』
 フランスの文字は、ヘブライの数字の表示法にならって、はじめの十文字を一単位にし、あとを十単位にすると、次のようになる。

  a b c d e f g h i k l m n o p q r s t u v w x y z
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160

 このアルファベットの数字で L'Empereur Napoleon (訳注 ナポレオン皇帝) という語を書くと、その数の合計が六百六十六となる、したがってナポレオンは黙示録に予言されているその獣である。そのうえ、このアルファベットによって quarante deux (訳注 フランス語の四十二) という語、つまり獣に大言と涜言を語る権威をあたえられた期限を書くと、quarante deux をうらわすこの数の合計もまた六百六十六になり、したがってナポレオンの権威の限界は、彼が四十二歳になった年、つまり一八一二年に来ることになる。


うげっ ! ( ̄□ ̄;)上下合うように丁寧に入れたスペースが全て無視されてUPされてます・・・_| ̄|○ 楽天のいぢわる。

フリーメーソンに関しては、以前こんな記事を書いてます。ちと読んでみてくださいな。
ベートーヴェン「第九」とフリーメイソン

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『戦争と平和』その5 2006.9.25

世の中は不条理に満ちていて、このつまらない、たった1人の人間に、こうまで自分がひどい目に合うのはどういう事だ? と疑問を突きつけたい事って、あるんですよね。すんごいわかりますっっ !
何故こんな人間が存在し、人の領域にずかずかと入ってくるんだろう? とか。
以下、アンドレイのセリフより引用です。

「ああ、情けない ! なんということだ ! 」と彼は言った。「考えられるか、
だれが何をしたというのだ、あんな屑みたいなやつが、人の不幸の原因になりうるとは ! 」


アナトーリとエレンの兄妹は、ピエール、アンドレイ、ナターシャに深く関わってきて、不幸をもたらす訳ですが、この2人の父親にしても、家族全体の特徴というのが表れていて、大変おもしろいです。
アンドレイ、マリヤの兄妹と、その父親の特徴にしても、ナターシャの家族の暖かい雰囲気にしても、家族の特徴と、その人々の関わりと言うのが実におもしろかったです。

◆国民性◆

トルストイはドイツ人に恨みでもあるのか?と思えるくらいに、ぼろくそ言ってますが、この国民性、当たってますでしょうか?

アンドレイ公爵は、この短い会見だけで、アウステルリッツ当時の記憶のおかげで、この人物の明確な人間像を組み立てることができた。プフールは、もう治療の見込みがないほど、狂信的にまで自己過信にこりかたまっている人々の一人だった。こういう人間はドイツ人にしかないが、それは科学という抽象的理念、すなわち完全な真理の観念的認識の基礎の上に立って、絶対の自信をもつことができるのは、ドイツ人だけだからである。フランス人が自信をもつのは、自分は頭脳も肉体も男性をも女性をも無抵抗にするほど魅力的であると考えるからである。イギリス人の自信は、自分は世界でもっともよく組織された国の公民であるという基礎の上に固定している、だからイギリス人は、イギリス人として何をすべきかを常に知っているし、イギリス人として自分がなすことはすべて疑いもなくりっぱなことである、と心得ている。イタリア人が自信をもつのは、自分が熱狂しやすく、自分をも他人をもあっさり忘れてしまうからである。ロシア人が自信をもつのは、まさに、自分は何も知らないし、知りたいとも思わないからであり、だからロシア人は、何事も完全に知ることができるなどとは信じないのである。ドイツ人の自信はもっとも始末が悪く、もっとも頑強で、もっとも鼻持ちならない、というのは、ドイツ人は、自分は真理を知っている、それは自分が考えだした科学で、これこそ自分にとって絶対の真理である、と思いこんでいるからである。

こういう文は実におもしろいものですが、そうそう、言えてる~~と素直に共感できない自分がおりました。(^^;)
と言うか、よくわかりましぇん。(イタリア人に関しては、言えてる気がするけど…)
このドイツ人に対する見方は、時代のせいもあるのかもしれません。
現在ではドイツという国は、早くから環境問題に取り組み、徹底してゴミを出さない、地球に対して素晴しい国だと思います。全世界が見習ってほしいものです。

まだまだつづきます。

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ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
峰不二子、デボラ・ハリー、ウエンディー・O・ウィリアムスが憧れの人!

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