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パゾリーニ『生命ある若者』その6 2007.2.2

「あるある~」と笑えた一節を。

ふたりとも、なかなかのしたたか者だったし、ローマやナポリの暮らしのこと、イタリア人やアメリカ人のことなど、話題はいろいろあって、おたがいにいんぎんに、大いに傾聴しながら話しあっていたが、同時に、その裏では機会あるごとに何喰わぬ顔で相手をやりこめ合っていたし、また腹の底では相手をまぬけな奴だとも思っていて、自分が話しているときは上機嫌だったし、また相手の話に耳をかしていなければならない時には、腹を立てていたのだった。

「自分が話しているときは」以降の所なんて、こういう人いるなあ、と笑えてしまいました。
パゾリーニらしい鋭い視線がよく表れている文だと思います。




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パゾリーニ『生命ある若者』その5 2007.1.31

ちょっとネタバレになりますが・・・

我が侭でどうしようもないアメリーゴという男、リッチェットから無理矢理金を出させては賭けをして負けてばかり。
リッチェットは賭け場からソッと抜け出し、その後憲兵たちが来て・・・その後の話。
この小説で、死んでいく若者たちが何人か出てきて、どれも印象的でしたが、彼の死に様は特に印象的でした。以下引用。

リッチェットがフィレーニの家からずらかったあの滅茶苦茶な晩、カチョッタもほかの者もみな、ふんづかまっちまったが、それでも抵抗はしなかった。ところがアメリーゴは、憲兵ふたりに両腕をつかまえられて外へひっぱり出されたが、外廊下へ出たとたんに彼らを壁に叩きつけて、ポンと、二、三メートルの高さから中庭に飛びおりてしまった。そして片っ方の膝が折れっちまったのに、それでも何とか壁づたいに逃げ出してった。憲兵たちが発砲して、一発、肩に当たった。けれども、やつはとうとうアニエーネの岸までたどりついてみせたのだ。すんでのことに、そこでつかまりそうになったけれど、血だらけのまんま川んなかに飛び込み、むこう岸の畠にかくれてポンテ・マンモロかトル・サピエンツァのほうにでも逃げようとしたのだろう。しかし川のまんなかで気を失い、血と泥んこでどぶ鼠みたいになってるところを憲兵たちにつかまって署へ連れられてってしまった。こうして病院に移され、そこに監禁されることになった。一週間もして熱が下がると、やつはコップのかけらで手首を切って自殺しようとしたけど、そのときは助けられた。すると、十日ほどたってから、リッチェットとアルドゥッチョがこのむアックワ・サンタで出あう前のことだけど、今度は二階の窓から飛びおりたのだ。一週間ばかり苦しんだあげく、とうとうあの世にいってしまった。
「あした葬式があるんだ」と、アルドゥッチョが言った。
「あん畜生がよお!」と、ひどく心を動かされてリッチェットは低い声で嘆声を発した。


散々威張りちらしていたこの男、あくまでも支配されるのを嫌い抵抗する姿は、感動的ですらあります。
次回で最後です。




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パゾリーニ『生命ある若者』その4 2007.1.29

こちらにつづき、またまた雲に関しての描写をもうひとつ。

ーー前略ーーうしろには、黒く大きく波うっている高台の上に、モンテヴェルデ・ヌォーヴォの点々と灯し火をちりばめた街なみが、逆光のなかにその巨大な半円形のシルエットを浮かべていて、その上のほうには粒々の多い白い瀬戸物のような雲が幾すじか、明かるい夜空に見えていた。

パゾリーニは、こんなに美しい視点で空を見ていたのだな、と思いました。
今回ちと短めですが、このくらいにしておきます。(^^;)
感想 (って言うより引用ですが…(汗)) まだ続きます。




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パゾリーニ『生命ある若者』その3 2007.1.25

前回予告したように、雲や空の描写が実に印象的でしたので、いくつか引用します。

 白み始めていた。家々の屋根の上では、風に翻弄され痛めつけられて雲が縞の模様を描いて見せていた。風はあの高い空の上では、世界ができたばかりのころと変りなく、今も同じように自由に吹きぬけているに違いない。しかしこの地上では、壁にたれさがったポスターをいたぶってみるか、紙くずを飛ばして穴ぼこだらけの歩道の縁まで、あるいは電車の線路にそって引きずって行くばかりだ。
 どこかの広場とか、墓場のように静まり返った陸橋の上とか、あるいは五、六階ぐらいの高さに足場を組んだ工事場と汚らしい草原のほかには何もない建築用地とかで、家並みが間遠になると、空がすっかり見えた。一面に無数の小さな雲が虫喰いの痕か吹き出物のようにぶつぶつと空を覆っていて、それはさまざまな形と色をしながら、ずっとむこうの蒼白く不規則にたち並ぶ <<摩天楼>> の上までおりて来ていた。黒い田螺や黄ばんだ貽貝、青みがかった口髭もあれば、卵の黄身の色をした痰壷もあった。そしてむこうには、まるで極地の川のようにまっさおな、澄みきった、ガラスみたいな空が幾筋にも伸びていて、そのさらにむこうには、煉獄の山のように見えるまっ白な、もくもくと巨大でさわやかな入道雲がそびえ立っていた。


 水で薄めたインクのように汚ならしい灰色の雨雲が、広場の空間を通して家々の屋根のむこうに見えるひとすじの空のあいだに広がっていた。雲が描いたあの壮麗な破滅の姿は今、色あせて行き、そしてまもなくこの汚濁の色のなかに呑みこまれて行く。鋼鉄のように照り輝いていた美しいまっ白な入道雲は、ぼろぼろにちぎれちぎれて、今はそれもまた泥のなかに消えて行く白雲のように消えていた。




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パゾリーニ『生命ある若者』その2 2007.1.24

その1で予告したように、ハッとするほど美しい文章を、いくつか引用します。
パゾリーニにこんな面があった事に驚く方もいらっしゃるかも。ちと長いっす。(汗)

 月の光が、とても広くてむこうの柵が見えないくらいのこの畠をすみずみ照らし出していた。お月さまは今、空のうえ高くに小さく見えていた。人間の世界にはもう興味を失って、ただひたすらあっちの世界についての瞑想に耽っているというふうだった。この世にはもうお尻しか見せてやらないぞというふうにも見えた。そしてその銀色の可愛らしいおけつから壮麗な光の雨をふらせて、いたるところ、その雨の洪水だった。月の光は畠のむこう、そこかしこに立っている桃、柳、桜、にわとこなどの、鉄細工のような、硬く、それでいて、白い煙のような輝きのなかで軽やかに身をよじらせて踊っている枝々の上に照り映え、そしてさらに地のすれすれまでおりて来て、畠の面に光の泡を、まるでかすかな光の膜でも貼ったみたいにきらきらさせていた。砂糖大根やのうぜんはれんはその丸っこい顔の半分を明るい光のなかに見せ、半分を闇のなかに隠していたし、レタス畠は黄色く、わけぎやちしゃの畠は金色に光る緑に見えていた。ところどころにむ積みあげた藁束や、田吾作のしまい忘れた百姓道具が、乱雑ななかにも絵のように面白く散らばっていた。しかしそれは大地がかってにこしらえ出した一幅の絵で、わざわざ誰かが骨折ってこんな細工をしたわけじゃなかったのだ。

いやあ、なんとパゾリーニらしさを出したエロティックな美しい文なんでしょう。途中で切れなくて長い引用になってしまいました。
次のはいかがでしょうか。

みなはすっかり興奮していて、電柱の下にいる三人に飛びかかって、とっ組み合いながらころがりまわるかと思えば、他の者はタバコに火をつけて、投げ捨てたそのマッチのせいで少しばかり草を焼いてしまっていた。山の背にそって走る気まぐれな風の流れにそって、草は黒く、狂ったように身もだえしていた。
 雲は一団となって吹き抜けて行き、それを思い出したように稲妻が赤く染めていた。もうすっかり暗くなった大気のせいか、下の工場で溶接をする火花のほうがもっと速く、もっと頻繁に見えていた。そしてピエトラータやティブルティーノの貧しい生活の声は工場のモーターの音に掻き消されていた。


草の描写など、なんともエロティックな感じです。
その後に雲の描写が出てきますが、空や雲に関しての美しい描写は繰り返し出てきました。次回はその辺を引用したいと思います。




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Author:吉乃黄櫻
ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
峰不二子、デボラ・ハリー、ウエンディー・O・ウィリアムスが憧れの人!

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