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カフカ寓話集 2005.11.15

カフカの短篇は、実に簡潔でおもしろく感心したので、この寓話集も楽しくすらすらと読めるものと期待したのですが…結構読むのしんどかったです。それでいて、実に印象深かったりもします。なんかカフカの痛みが伝わってくるんだよなあ。
( ココに書いた『バベルの図書館』とかぶる作品も結構あります。)

特に『巣穴』。すんごい細かい強迫神経症的な感じがしました。神経症的辛さが伝染して読んでてしんどい作品かも。
この中から、あーいるいる ! こーゆー人 ! と思った一文を。

不審をかき立てられて、やおらあとを追ってくるのは、本来の敵でなくてもいい。ごくたあいないやつら、しけた連中かもしれないが、もの珍しげについてきて、それによって当人はそれとも知らず、世の敵意の火つけ役になる。
 その手のものではないかもしれず、もっと悪く、多くの点で最悪というべきは、それが私の同類である場合だ。巣穴のことをよく知っている森の兄弟、争いは好まないが、たちの悪い風来坊で、自分でつくらずに巣穴の住人になりたがっている悪党だ。


ココでもとりあげた『雑種』や、『中年のひとり者ブルームフェルト』、『父の気がかり』など、カフカの短篇には、実に変ったいきものが出てきますが、『獣』もその種類です。好きです、こういうの。1ページの短篇です。

 大きな尾をもった獣である。何メートルもの狐のような尻尾であって、いちどそいつをつかみたいと思うのだが、どうにもつかめない。獣はいつも動いていて、尻尾をたえず打ち振っている。からだはカンガルーのようだが、顔は平板な、楕円形の人間の顔とそっくり。無表情だが、牙を隠したり剥き出すときに表情があらわれる。---後略---

『メシアの到来』も1ページの短篇です。ラスト2行を引用。
確かカミュだったかが、もし神がいたとしても、それは自分を助けてくれるものではないから、いてもいなくても同じだ、みたいな事書いてたと思うのですが、そんな事を思い出しました。

 メシアはやってくるだろう----もはや必要なくなったときに。到来の日より一日遅れてやってくる。最後の日ではなく、とどのつまり、いまわのきわにやってくる。

カフカ寓話集 (岩波文庫)カフカ寓話集 (岩波文庫)
(1998/01/16)
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カフカ『アメリカ』 2005.11.12

読了したのが10月11日なのです。んで、今こうやって書いているのが11月6日。う~~。書けにゃい・・・。メモぐらいとっておくべきであった・・・_| ̄|○
貼った付箋に頼って、なんとかUPしてみます。
カフカにしては、普通にわかりやすく読めた気もするし、でもやはり理不尽でメルヘン (と言ってもカフカ的な) な感じもあったりしたと思います。
主人公にカール・ロスマンと言う名前がちゃんとある所からして、カフカ作品の中では異色とゆー気が。
そして、この主人公が実に性格がイイんだけど、もうとことんひどい目に会うんですよねえ。理不尽極まりない。あまりにもお子ちゃまな周りの人達にイライラさせられちゃうのも、カフカ的です。
『城』の感想で書いたような幼稚性です。

「アメリカ」について、なかなかうまく言い表しているのではないかと思った箇所を。

この土地では他人の同情心なんかをあてにしてはいけないのだ。カールはアメリカのことを本で読んでいたが、この点ではまったく正しかったわけだ。ここではただ幸福な人々だけが周囲の無関心な顔にはさまれながら、めいめいの幸福をほんとうに享楽しているように見えた。

実にカフカ的で笑えた会話を。普通はこんなに正直にそうは言わないっすよね。(笑)

「おじゃまでしょうか?」
そうカールはきいてみた。
「ええ、たしかにね……」


私、今度「父への手紙」を読んでみたいと思っているのですが、カフカと父親との関係は興味深いです。
解説の「カフカの生涯」の所を引用します。ちと『チボー家の人々』のオスカール親父を連想しました。

若いカフカは生活力のたくましい、自信に満ちあふれて独裁的な家長を尊敬し、ひそかに愛着さえもいだきながら、同時に反発と、恐怖を感じて、その精神的束縛から脱出しようともがきつづけながらも、ついに父親の支配圏からのつながりを断ち切れなかった経過には、そのままフロイトの精神分析学の、かっこうな例証になりそうな、微妙な重点がある。このような愛情の、根づよいコンプレックス心理 (つよい感情をおびて、もつれ合い、精神的なしこりの原因となる、観念の複合体) こそ、カフカの文学の秘密に照明をあてる、ひとつの重要な手がかりになるだろう。

角川文庫 中井正文訳で読みました。

アメリカ (角川文庫)アメリカ (角川文庫)
(1972/01)
フランツ カフカ、フランツ・カフカ 他

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『カフカ、映画に行く』その2 2005.7.17

この本、映画に関してのいろんな著名人の言葉がちらほらと出てたりしてるのが、ちょっとイイです。

以下、ギョーム・アポリネールの『地帯』より。

おまえは声をふりしぼって歌っているパンフレットやカタログやポスターを読む。
それは今朝の詩であり、散文のためには新聞がある。


1921年の或る日、パレスチナ移住に憧れていたカフカは、『シオンへの帰還』というパレスチナ映画を観ます。
1920年11月には、プラハでも反ユダヤ主義の暴動がおこっていたそうです。カフカがミレナ・イェセンスカに書いた手紙です。

「毎日午後には、僕は街でユダヤ人への憎悪を浴びています。ユダヤ人が <疥癬人種> と呼ばれるのも耳にしました。人はこれほど憎悪されている場所からは、逃げ出すのが当然というものではないでしょうか? (そのためにはシオニズムとか民族感情などというものはまったく不必要です) そこにとどまることに固執する英雄的精神は、浴室から一掃することのできないゴキブリのそれと同じです。--後略--」

ここに、もしかしたら『変身』が生まれた背景があるのかもしれません。

トーキー到来と共に、カフカに死が訪れます。サイレントと共に亡くなったのですね。
カフカの早世は惜しい事ですが、もっと長生きしていれば、妹達のようにナチに殺されていたのかも・・・と思うと、複雑な気持ちです。

この作者のハンス・ツィシュラーは、映画・舞台での俳優活動のほか、演出家、脚本家、プロデューサー、エッセイストとさまざまな顔を持つ多才な人だそうです。
俳優とての、映画出演作が、ぬわんと、ゴダールの『新ドイツ零年』、ローベルト・ファン・アカレンの『別れの朝』、ヴェンダースの『さすらい』だって ! !

  


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『カフカ、映画に行く』その1 2005.7.16

まるで『ドラキュラ都へ行く』とか『毒毒モンスター東京へ行く』のようなタイトルですが・・・人が毒虫に変身する小説は書いていても、化け物じゃなくて、カフカです。

これは、主に、当時の恋人フェリーチェ・バウアーへの手紙を元に、カフカの観た映画と、その時のカフカの心境、情況等が書かれている本です。

まず興味深いのは、カフカは映画誕生の時期をリアルタイムで体験してるのですよ ! キネマトグラフですぜ。日本では確か「活動写真」って言われてましたよね。
なので、もうサイレントもトーキーも終わって、CGやなんかまで導入された今現代観に行くのとは訳が違うのです。カフカの興奮ぶりもあったり前の話ですよね。
彼は「意識を失うほどの孤独」を求め、書く事からも解放され、映画館に行ったのです。
その何10分かは、日常を忘れてのめり込む事の出来た幸福な時間だったのではないでしょうか。

カフカはフェリーチェとは2度婚約し、2度ともだめになってるのですが、その時の情況もわかったりして、おもしろかったです。
これ、カフカの内面の問題だったんですね。ちとフェリーチェかわいそう・・・カフカからプロポーズしたのに、いざ共同生活をする事を考えると恐怖におののいてしまふのだから。
とは言え、カフカの一方的なラブレターを読んでいても、フェリーチェ像とゆーものが一向に見えて来ないのが不思議なのです。
そして、写真で見ると、ハッキシ言ってブス・・・。鈍くさそーな顔。この人<自分>とゆーものを持ってる人だったのかなーって感じがするのですが…カフカはプロポーズにOKした彼女にいささか失望したりしてるんですよね。

これも、またまた長くなってきたので、2回シリーズとさせていただきます~。


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カフカの誕生日 2005.7.2

今なにげに、たまに見に行くココを見てみたら、今日はカフカのお誕生日なんですね !
カフカの言葉は心に残りますね。

5 青春が幸福に値するのは、美しいものを見る能力を備えているからです。この能力が失われると、慰めのない老年、つまり不幸が始まります。だから、美しいものを見る能力を保っていれば、人は老いぬものです。   「ヤノーホ「カフカとの対話」」     

 カフカ.F 1883年生


命日は6月3日です。41才の誕生日まで、あと1ヵ月だったんですね。

3 人は喜んでいるかのように振舞うだけのことが多い。私もそうだ。私は快活を装うが、それはその後ろにわが身を隠すためである。   
 4 家から出かけることは必ずしも必要でない。机についたままで耳をすますのだ。いや耳をすますこともない。ただ待つのだ。いや待つこともない。ただじいっと独りでいるのだ。そうすれば世界は自分から仮面を脱ごうとするだろう。おまえの前で世界は恍惚としてのたうち回るだろう。   「罪・苦悩・希望・本当の道についての考察」 
 
 カフカ.F 1924年没


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ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
峰不二子、デボラ・ハリー、ウエンディー・O・ウィリアムスが憧れの人!

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