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ドストエフスキー『白痴』【再読】その2 2005.4.30

*ネタバレ警報*

コレの続きです。

『白痴』はある意味で、ひじょーに重要なドストエフスキー作品です。
死刑執行を宣告されて、直前で取り止めになった、その実際の経験が、ムイシュキンの口から語られます。
ぬわんと、この部分、その1のコメントでまろさんも言及されています。
新潮文庫、木村浩訳の上巻109ページあたりですが、長いので、ほんのちょっとだけ。

ついに生きていられるのはあと五分間ばかりで、それ以上ではないということになりました。その男の言うところによりますと、この五分間は本人にとって果てしもなく長い時間で、莫大な財産のような気がしたそうです。この五分間にいまさら最後の瞬間のことなど思いめぐらす必要のないほど充実した生活が送れるような気がしたので、いろんな処置を講じたというのです。つまり、時間を割りふりして、友だちとの別れに二分間ばかりあて、いま二分間を最後にもう一度自分自身のことを考えるためにあて、残りの時間はこの世の名ごりにあたりの風景をながめるためにあてたのです。

ここでまたまたカミュの『異邦人』ですが、ムルソーは、この貴重な最後の時間を神父に邪魔されるわけです。



上巻38~41ページでもギロチンによる死刑について語っていますが、ここなんか実におもしろいです。

いいですか、頭をこうやって刀の下において、その刀が頭の上へするするとすべってくる音を耳にする四分の一秒こそ、何にもまして恐ろしいんですよ。

この小説、中盤かなり辛いんですよ。数100ページ我慢して読まなきゃなりましぇん。
ラストの盛り上がりが凄いんで、結構忘れてるかもしれませんが、私はイポリートの場面があまりにもしつこくて長くてうんざりしたのを記憶してました。
まあ、全然つまんない訳じゃないんですけどね。イポリートの弁明の最後の方なんかは、かなりおもしろいんです。
それに、この人はこの人で、なかなかおもろいキャラではあるんですけどね。

そんじゃ、ちと長い引用をしたいので、またまた次回に続きます~。


 

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ドストエフスキー『白痴』【再読】その1 2005.4.29

*ネタバレ警報*

『白痴』は確か一番最初に読んだドストエフスキーです。
それからドストエフスキーにはどんどんハマッていったのですが、1年以上読んでいなかったのでした。
そして、黒澤監督に引っ張られてまたドストエフスキーの世界に戻って来てしまいました。( こちらを見てくださいね ! )

おそろく、大方の感想は、ムイシュキン公爵に同情的で、彼がなぜああなってしまったのか、周りの人間こそ白痴なのではないか? 周りが悪い ! 社会が悪い ! みたいなのが多いと思うのですよ。

私は、それに似たような同情心を起こしたのは、カミュの『異邦人』のムルソーに対してでした。
真に正直な人間がどういう事になるか、と言う事です。



ムイシュキンに対して感じたのは、1度目に読んだ時と同じ、怒りの気持ちでした。
この小説で、実に実に可哀想だと思うのは、アグラーヤ、そしてロゴージンです。
一人の人をしっかりと愛していれば、この小説のような不幸はおきないのではありませんか。何故、絶対にもう愛していないと言ったすぐ後で「心から愛している」と気持ちが簡単に変ってしまうのでしょうかね。2人の人を同時に愛するとはまた別の意味で、理解不能です・・・
そして、ナスターシャ・フィリポブナは、ムイシュキンと同類ですね。ムイシュキンが彼女を恐い、気ちがいだ、と言っていたのは、同類だからかもしれませんね。
私の、ムイシュキンに対する怒りは、後半にエブゲーニイ・パーヴロヴィチが本人に、実に適格に言ってくれています。

ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』で、こんな箇所があります。

「悪人がいくら害悪を及ぼすからといっても、善人の及ぼす害悪にまさる害悪はない」



1度目に『白痴』を読んで、まず考えたのは、まさに真に純粋な人間の及ぼす害悪についてでした。

ムイシュキンのおもしろい所は、彼は白痴どころか、ある面では非常にズバ抜けて頭がイイんです。
人を瞬時にして、実に深くその人そのものを見抜いてしまう能力等。
そして、それをきちんと表現出来る能力もあり、自分の伝えたい事、感情を、きちんと伝えられる能力も高いと思います。しかし、ある意味実に鈍感な所が笑えます。
言ってはいけない事がわからないのは、ちと困りものですよね。
そして、知らずに人を傷つけています。それがドストエフスキー的ユーモアだったりもします。ガーニャに対して、彼が何のとりえもない平凡な人間である事を力説する所なんて爆笑ものですよね。

ムイシュキンは、アリョーシャ・カラマーゾフとキャラかぶりませんか?
そして、ロゴージンはドミートリイ。
私はイワンが好きなんですが、映画の『カラマーゾフの兄弟』で、イワンが禿頭のオヤジだったのはショックでした・・・これDVDあるのね。



 

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ダンテ「慣性の法則」知っていた ! ? 2005.4.25

この頃ネタがないなあと思っていた所、新聞の切り抜きハケーン !
しかしコレ、4月7日の記事です。今さらもいーとこですが・・・(汗)
ウィリアム・ブレイクの記事と続けて紹介できるからいっかなと。
んで、リンク貼ろうと記事を探してみたんですが、讀●オンラインからは既に消えてました・・・orz しかたないので全文入力。要約して書くより早いので・・・

 ガリレオが「慣性の法則」を発見する300年以上前に、ダンテがその基本原理を理解し、叙事詩「神曲」の中に描写していたことが明らかになった。イタリア・トレント大のレオナルド・リッチ研究員の成果で、7日発行の英科学誌ネイチャーに掲載される。
 慣性の法則は「物体は、外部から力を受けない限り、同じ速度で動き続ける」という物理法則。ガリレオが17世紀前半に発表した。走行電車の中でジャンプしても同じ位置に落ちるのはこの法則で説明される。
 リッチ研究員によると、くだんの表現は、14世紀初頭に執筆された神曲「地獄篇」の第17歌に登場。2人の詩人が翼の生えた怪物の背中に乗って地獄を下降する場面を描いた、「ゆっくりと泳ぐように進み 旋回しながら降下する されど顔に当たる風、下から来る風によってのみ飛んでいるとわかる」という部分。
 怪物が等速で飛んでいるため、乗っている主人公は動いているのがわからないほど静かだと感じている。リッチ研究員は、飛行経験がないはずのダンテが、慣性の法則を「驚くべき直感」で理解していたうえで表現したと指摘している。


科学でも文学でも、優れた人とゆーのは、どっちにも通じていたりするなあ、と思うんだけど、科学者も古典文学等を読んでいたからこそ、こーゆー発見が生まれるのね、とか思ったりして。
おもしろいですよね~。

ダンテ「神曲」
ウィリアム・ブレイク

集英社文庫ヘリテージシリーズ↓では、ウィリアム・ブレイクの挿し絵が付いてます。&寿岳文章さんの挿し絵解説も !

   

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夕刊にウィリアム・ブレイクが。 2005.4.24

讀●新聞20日の夕刊の話なので、もう4日も経ってますが…ウィリアム・ブレイクの事が出ていて、うれしくなっちゃいました。
「三木卓さんと詩を読もう」と言う記事です。
平凡社の『ブレイク詩集』土居光知訳の「笑いの歌」が出てました。

  「笑の歌」

みどりの森 喜びの声あげて笑い
えくぼする水 えみひろがって流れ
風 われらの たわむれごとを笑い
みどりの岡 やまびこをかえすとき

きりぎりす 楽しいけしきのなかで うたい
牧場はしたたるような みどりのえまい
メアリとスザンとエミリ
かわいい まるい口でうたう ハッ ハッ ヒィ

羽美しい いろ鳥は 木の間で笑い

木陰の 食卓にはさくらんぼやくるみ
さあ おいで みんな いっしょに
楽しい合唱をしよう ハッ ハッ ヒィ


「ハッ ハッ ヒィ」って・・・なんかお産みたい。(笑)
三木卓さんと言う人は、1935年生まれの作家・詩人さんだそうで、ぬわんと、小学6年生の時の教科書に、この詩が掲載されていたそうです。

「詩も絵も、一度出会ったら忘れられません。」には全く同感です。

ブレイクについてはこちらも御覧くださいませ。

ウィリアム・ブレイク

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ラ・フォンテーヌ『寓話』 2005.4.22

映画ゴダールの『右側に気をつけろ』や、プルーストとかあらゆる文学にも言及されたりしているラ・フォンテーヌの『寓話』。図書館にあったので借りて読んでみました。

この日記で書いたゴダールの『右側に気をつけろ』でめちゃめちゃ素敵なジェーン・バーキンが蝉さんを演じている、『セミとアリ』。
これ寓話の一番最初に出てたんですが、なんだあ、この話か ! 誰でも知っている有名なおはなしだったんですね。てか、これは『アリとキリギリス』ではなかったですか?

夏のあいだずっと
歌をうたっていたセミは、
北風が吹いてくると
ひどく困ってしまった。
ハエや小さな虫の
かけらひとつみつからない。
おなかがすいてたまらないので、
近所のアリの家へいって、
春になるまで食いつなぐため、
穀物を少々
貸して、と頼む。
「取り入れまえに、きっと、
元利そろえて
お返しします。」
アリは貸すことを好まない。
貸すなんて、そんな不徳はもちあわせない。
「暑い季節になにしていたの。」
アリは借り手のセミに訊く。
「夜も昼も、みなさんのために、
歌をうたっていましたの、すみません。」
「歌をうたって? そりゃけっこうな。
それじゃこんどは、踊りなさいよ。」


あとは、『北風と太陽』等おなじみのおはなし満載でした。イソップを基にしてるのが多いみたいです。
教訓、箴言、説教とゆー感じ。
しかし、訳が良くないのか…何が言いたいのか、なんだか良くわかんねーってのも多数。ニヤリ、クスクスと笑える箇所もあったものの、後半の方はつまんなくて早く読み終わりたかったです。箴言ならショウペンハウエルとか読んだ方がおもしろい。
いちばんおもしろかったのが、寓話の前に出ていた、イソップの話『フリギアの人イソップの生涯』だったかも。
抜粋した子供用の絵本とかの方がいいかも。
私が読んだのは、岩波文庫の上下巻。今野一雄・訳です。


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トーマス・マン『トニオ・クレエゲル』 2005.4.20

続けて、同じくマンの『トニオ・クレエゲル』。
『ファウスト博士』のスレッドに続けて書いてました。なんつー怠惰な事を・・・
最初に<続けて>とあるのは、『ファウスト博士』に続けてとゆー意味です。
これは2002年3月1日投稿です。

続けて「トニオ・クレエゲル」読みました。
これ、2ちゃんのヘッセスレで書いてた人がいたけど、本当にヘッセの小説にそっくり。
風景や物や人物などの芸術的な繊細な描写なんか、まさにヘッセです。
トニオ・クレエゲルが友人の画家から言われる言葉
「あなたは道に迷っている俗人」
って、まさに自分の事を言い当てられた気がしてハッとしてしまいました。
美しい小説でした。

この調子で次は以前途中で挫折した「魔の山」を頑張って読んでみようかな。
これ、文庫本でもかなりブ厚い。持ち歩くには重いっすねえ。


『魔の山』はこれ書いた後読了してます。
『魔の山』については大量に書いてありますので、今度UPしますね~。

 


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トーマス・マン『ファウスト博士』 2005.4.19

ウィーンのガイドブックを読んでいると、6才のモーツァルトがマリー・アントワネットに求婚してたり、シューベルトがサリエリに教わっていたり、そんな逸話が楽しいです。
それにしても、まさに芸術の都 ! 作曲家の名前だけでもすごすぎるっっ !
そんな中、シェーンベルクの名前を見て、マンの『ファウスト博士』を思い出し、昔書いた感想をまたUPしてみよっかと思いました。
しかし、シェーンベルクについては言及してないですね。(^^;)
2002年2月27日の投稿です。

(多少ネタバレあり)

今日読了。
おもしろかった! 名作!
なぜ読もうと思ったかは、ニーチェをモデルにしてるってのと、確かここのベスト3投稿であげていた方がいたから早く読みたかったんですね。あれ結構参考にしてます。それぞれ選びに選びぬいた3册だからね。

これは実に芸術的な作品ですね。
「ファウスト博士の嘆き」って聴いてみたいゾ。
替わりにベルリオーズでも聴こうかなと思って探してるんだが…
全体としては、結構読みにくくてだるい箇所もあったり、我慢して読んでればおもしろくなってきたり、後半がーーーーっと盛り上がったりと、ドストエフスキーの「悪霊」を最初に読んだ時みたいな感じでした。しかも、「カラ兄弟」「悪霊」と同じように、これにも悪魔が出てくるのね。
悪魔との長い会話は、どーもリアルさに欠けるようで、私はいまいちと思ってしまった。
アドリアンもちとスタヴローギンぽい。
人物描写の細かさなども、ドストエフスキーの影響が伺い知れる。
しかし、トーマス・マンも心理学的にすぐれた作家ですね。
あと、この小説に出てくる恋愛話が実におもしろい。
恋愛ってつまんないものが多いんだが(^_^;)
それと、音楽理論を知っていれば、もっと楽しめたんだろうな~と思います。


・・・と今読み返してみると、どうしようもねー感想じゃ。(-_-;) _| ̄|○
「ベスト3投稿」とあるのは、あなたの本ベスト3みたいなスレッドがあったのです。コレ今度ネタにしてもいいな~

  





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ヘンリ・ミラー『北回帰線』その2 2005.4.16

コレのつづきです。
今日は引用特集って事で。
結構読み終えるのにしんどい本だったんですが、所々おもろい箇所もありました。
なんだかなーと思いつつも、いつの間にやら惹かれているよーな作家かもしれません。

例のインド人のセリフ、おもろいっすよね~。あと、お互いを「ジョー」と呼び合うのも笑えました。
インド人の出てくる所は、ほんと好きです。この場面が終わると、パッタリと出なくなってしまうのは惜しい。

事実----女なんてものは、みんな似たりよったりだね。服を着ているときの女を見ると、あらゆる事を想像する。個性みたいなものがあると誰でも考えるが、むろん、そんなものはありはしない。両脚のあいだに割れ目があるだけのことさ。そいつに男はみんな夢中になるんだ----ところが、誰も、そいつを時間の半分も見るわけじゃない。あれがあすこにあるのだと知って、考えることといえば、ただそのなかに銃杖をさしこむことだけだ。まるでペニスが代りに考えてくれてるようなもんさ。

ロシアのユダヤ人女性のタニアの出てくる場面。
元気じるし (死語?) とか、底抜けの明るさとか、そーゆーのがひじょーに苦手な私は、ここには共感しました。

ロシアでは悲しい顔を見るのをいやがる。人が陽気で、熱狂的で、快活で、楽天的であることを欲する。これはぼくには、すこぶるアメリカに似ているように思えた。ぼくは生れつき、そのような熱狂さをもっていなかった。

それにしても、<アメリカ的>と言うのは不思議だと思います。
アメリカってのは、世界各国の人たちの集まっている国ではないですか。だけど、独特のある種の個性がありますよね。
以前甥と一緒に観た『ファイティング・ニモ』のニモのオヤジのセリフなんて、実にアメリカ的なつまんないアメリカンジョーク連発な感じでした。


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民俗的に言えば、ネイティヴインディアンこそがアメリカなんですけどね。

そして、この小説には、フランスに憧れるヘンリー・ミラーの「所詮自分はアメリカ人」だと言う気持ちが漂ってる感じがしました。

この人が傾倒したと言うドストエフスキーについて触れている所を。

 たとえばスタヴロギンについて考えてみる。するとぼくは、何か神聖な怪物が高いところに立って、おのれの臓腑を引きちぎってわれわれに投げつけている光景を思いうかべる。憑かれた狂気のなかで大地は震撼する。それは架空の個人にふりかかる災厄ではなくて、人類の大部分が埋没し、永久に抹殺される大天変地異である。スタヴロギンはドストエフスキーであり、ドストエフスキーは、人間を麻痺させ、ないしは頂点へ引きあげるそれらいっさいの矛盾の総和である。彼にとっては、あまりにも低いがゆえに入りこめぬ世界というものは存在せず、あまりにも高いがゆえに登るのが怖ろしいという場所もなかった。彼は深淵から星にいたるまで、全世界を通りぬけた。神秘の核心に身をおき、その閃光によって闇の深さとひろがりとをはっきりとわれわれに照らしだしてくれる人物に二度とふたたびめぐりあえる機会がないのは残念である。

何か自分にとって嫌なものを感じてしまうのは、この人の性質が、私の好きなものとは対極にあるせいかもしれません。
訳者大久保康雄の解説によれば、彼は不思議な処世の才にめぐまれていたとか。友人をつくる才能です。貧乏な彼に、いつも誰かが食うものと寝る場所を提供してくれたとか。
これはブコウスキーとは全く逆な面だと思うんですよ。
人と関わるのが苦手な孤独な一匹狼が好きなんですよね~私は。
とは言え、完全無視はできない作家と言う気も少ししてるのです。

そして、この小説は『北回帰線』が最初読者にあたえるのは、おそらく一種不可解な、混沌として捉えがたい総体という印象であろう。と解説にありますが、その通りでした。そして、ヘンリー・ミラーに影響を受けたロレンス・ダレルの『黒い本』を数年前に読みましたが、これはさらに輪をかけて読みにくかったよーな記憶が。

解説にはこのように書かれてましたが・・・

(前略) この大作は、後世プルースト、ジョイスの後をつぐ二十世紀文学の金字塔の一つとして評価されるのではないかと期待される。

それは絶対ないと思います。(笑)

新潮文庫の大久保康雄・訳で読みました。


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ヘンリ・ミラー『北回帰線』その1 2005.4.15

読んでから間があいてしまい、どんどん書くのがだるくなってきてしまいました。(^^;)
週末あたりに読み終われば、早めに書けていいんですけどね。

んで、ヘンリー・ミラーですが、『南回帰線』と『オプス・ピストルム』だったけか。2册程読んでます。
ブコウスキーと並べて称してる方もいたりして、まさに私好みなのではないか、と期待して読んだものの、どーもいまひとつピンと来なかったのでした。
ヘンリー・ミラー関連では『アナイス・ニンの日記』も読んでみたけど、この人あんまし好きになれんな、とゆー感想でした。

しかし、きっとヘンリー・ミラーではいちばん有名な『北回帰線』を読んでみない事には・・・と思っていたので、読んでみました。

つらつらととりとめのない、小説とも言えないような本でした。

最初すんごいかったるくて、100ページぐらいまではまるでおもしろくなかったんですが、インド人が登場してからが俄然おもしろくなってきまして、ぐいぐいと読めていきました。

しかし・・・インド人がいなくなると、また元通りつまんなくなったり。

その後2回程、この本では計3度程盛り上がりがありました。
ユダヤ人女性のタニヤと、友人のフィルモア&すごいフランス女のジネットの出てくる場面です。
特に、インド人の所は、めちゃ笑えて、この作家も好きになれそうだったんですけどね。う●この所なんか最高なんだけど。びみょ~です。実にびみょ~であります。

まあ、このとりとめのない小説も、なかなかの評価を受けている訳で、それは、まさに、このとりとめのなさ。小説の形をブチ壊している事への評価であり、単語をしつこく並べるような、独特の個性が魅力的な所もあります。
共感する部分もあるし、わかるんですけどねー。でもつまんないのだから・・・

なーんて、こんな感想を書きつつ、次回へつづく。(笑)


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ドストエフスキー『プロハルチン氏』 2005.4.11

今日はやはり手抜き投稿で行こう。(^^;)
過去の投稿そのままUP。
今『白痴』を再読しているので、ドストエフスキーを。それもめちゃめちゃマイナーで、よほどのドストエフスキーファンじゃないと絶対読んでいないであろう小説です。全集にしか入ってないかも・・・

ちなみに『白痴』再読のきっかけは、黒澤映画を観る準備の為でした。こちらも見てみてくださいね~。

 

以下は2001年6月12日、別所に投稿したものです。

私が読んだのは、新潮社のドストエフスキー全集、小泉猛訳です。
謎な小説で、良くわからない所も正直ありますが、(最後のセリフなんか) ドスト作品の主人公らしく、このプロハルチン氏ってのは、極端で正直なやつです。
かなり『分身』と似てると思います。
この主人公は、いつもぼろぼろの服を着て、食事も家主の出す食事を全部とらずに半額に節約したりと、もうとにかく貧乏でケチな人なんですが、死んだ後に敷き布団の中からお金がざくざく出てくるという不思議な話です。
これは、普通は「不安から」お金を使えないでいると解釈されるようなんだけど、私が1回読んで直感的に思ったのは、この人は、コレクターではないかという事でした。
つまり、この人にとってのコレクションが「お金」だったのではないかと言う訳です。
お金が種類別にきちんと分けられていたというのと、かなりめずらしい物もあったという事。また、コレクター的な執着的変質的な性質から(悪口ではない)、そう思ったわけなんですが。私独自の感想です。

そして、これも意見が分かれる所なんですが、私はプロハルチン氏は強者だと思います。
プロハルチン氏と同じアパートに住む他の住人との対比は現代に十分通じる大変興味深い所です。
弱い人というのは、無意識に人とくっつき群れるものだと思います。
最近気付いたのですが、1人で生きている孤高の人 (つまりプロハルチン氏はそういう人で、他の住民は群れる) は強いのだと思います。
(人は1人では生きていけないというのは十分承知してますよ。これは群れるか群れないかという意味です。)
そして強者は弱者からよってたかってたたかれます。それで傷つき、ベコベコに凹むから、一見弱そうなんだけど、実は (もともと) 強いからではないかと思っています。

あと、セリフのおもしろさ。
「おまえなんか靴のかかとみたいなやつだよ」「いんちきな本だよ」等。
そのセリフの1つ1つが的外れではなく、かなり核心のついたものなので笑えるのですね。


『白痴』は上巻400ページあたりまでは、大変おもしろく読んでたんですが、その後かなーり辛くなってきてます。早くロゴージンのあの場面に来ないかなー。ナスターシャの。(ネタバレをさけてるつもりなのだが。)
しかし、来月海外旅行に行く事になり、ちとガイドブックを読みたいので、一旦中断します。ちょっとだけど。
んで、『白痴』再読の為に中断していたヘンリー・ミラー『北回帰線』を、『白痴』を中断して読了しました。(ややこし) 近々UPする予定です~





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竹内久美子/日高敏隆『ワニはいかにして愛を語り合うか』その2 2005.4.6

コレのつづきです。2001年9月15日に投稿したものです。下手な文章じゃ。(引用部分でなく、その前の自分の…) 寝る前に書いたぽい。

つづきです。
ちょっと長い引用になるので、読むの大変だったら申し訳ないっす。
下の引用部分、好き嫌いの問題はどうかな? と思うんだけど、実際好意を持っている人に言ってる事が伝わらなかったり、逆に自分が理解できなかったりする事もあるわけで、(この場合、好き嫌いも意識上の事なので、無意識に『嫌い』という感情もあるかもしれないとは思うものの) 新皮質と旧皮質の事は、なるほど ! とも思うのであります。

引用
 私たち人間は、自分たちは脳がものすごく発達していて、ずばぬけて頭のよい動物だと思っている。それはたしかにその通りであるが、よく考えてみると、実はその発達しているのは大脳の中の新皮質とよばれる進化的にはごく新しい部分だけであるということがわかる。人間の言語とか文化とかいうものは、この部分が急速に発達したおかげでできあがってきたものだ。だが、個々の感情や行動は、大脳の中のもっとも古い部分、旧皮質によって左右されている。この部分が「古い」というのは、それが古く爬虫類の時代から存在し、今と同じように感情や行動を司っていたからである。つまり、脳のこの部分は爬虫類の中でもっとも古くからいるといわれるワニの時代から存在したもので、いわばワニの脳とあまり変わりはないのである。好き嫌いとか、怒りとか、愛着とか、喜びとか、悲しみとかいう、動物(そして人間)の日常生活に最も基本的で、もっとも重要な情緒は、脳のこの部分でうまれる。性的な感情もまたしかりである。
 よく考えてみれば、私達人間は、みなこれらの感情にもとづいて動いている。脳の新皮質がどのように理路整然とした言語で説明しようとしても、ワニの脳が嫌いといえば、どうしようもないのだ。それをことばで説明することはできない。
 一生けんめい説得されても、言っていることはわかるがどうも納得がいかない、何かがちがう、ということがしばしばある。それは、自分の中にいるワニが相手を嫌っているのだが、私たちはそれに気がつかずに、その嫌いな理由を「人間の脳」である新皮質を通したことばを使って相手に伝えようとする。けれど相手の方のワニもこちらをいいと思っていないから、ことばはそこまで伝わらない。こうしてディスコミュニケーションがおこる。
 理屈で話し合えばわかる、というのは幻想に近い。人間は要するにワニなのである。コミュニケーションが重要になってくればくるほど、私たちはそのことをしっかりと意識しておくことが大切である。


竹内久美子については、ココココにも書いてます。



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竹内久美子/日高敏隆『ワニはいかにして愛を語り合うか』その1  2005.4.5

手抜きシリーズ過去の投稿そのままUPです~。昔別の所に投稿したものです。
しかもコレ、ほとんど引用でした…(汗)
でもおもしろいんで、UPしちゃいます。過去投稿分は茶色で、引用部分を緑にしますね。
2001年9月14日の投稿です。

この頃脳味噌の休養が必要と思い (笑)、読んでて本格的に訳のわからなくなってきたカントをほっぽりだし、妹の部屋から失敬した「星の王子様」を読み、その後、だいぶ前に買って読んでなかった、竹内久美子のデビュー作であり、日高敏隆との供著である「ワニはいかにして愛を語り合うか」を読んでいます。(半分ぐらい読んだ)

動物学をやっていると、人間とはどんなものかがわかると言うか…かなり鋭い見方をしているように思います。

まず初っ端から日高氏の
「プロローグ かつて人間は『ワニ』であった」
の出だし、まさに今つきつけられてる問題であり、物凄く共感してしまった…

引用
 しばしば私たちは、自分の思っていることが相手に伝わらなくて悲しくなる。うまくことばが見つからない。いくら順序だてて話しても、相手が筋をのみこんでくれない。
ひどいときには、こちらが思っているのとは全く逆の意味にとられてしまう。
情報化時代、コミュニケーションの時代などといわれるが、私たちが実際に日々経験しているのはむしろ「なかなか気持ちが伝わらない」というもどかしさである。
「ひかり何号で、京都に何時何分につきます」などという「情報」ならまだしも伝えやすい。
好意とかほめことばとかいうものになると、とてもそう簡単にはいかない。皮肉にとられたり、あてこすりにとられたりすることさえある。「愛」に至っては、どんなに努力を重ねても、伝わらないものは伝わらないし伝わるものは伝えようとしなくても自然に伝わってしまう。


その後、人間があまりうまくいかないのは「人間はかつてワニであった」という事を忘れているからである。

と発展するのですが、この辺かなりおもしろいんですが、眠くなってきたので (笑)、明日また書きます。(ん? 迷惑だから書くなって? )



ワニはいかにして愛を語り合うか (新潮文庫)

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Author:吉乃黄櫻
ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
峰不二子、デボラ・ハリー、ウエンディー・O・ウィリアムスが憧れの人!

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