ドストエフスキー『鰐』 2005.7.30
福武文庫、米川正夫訳。
ドストエフスキーの、あまり知られてない短篇、実は結構眠いのが多かったりするんですが…ドストエフスキー大好きさんが読むと、ここにあの小説の元になる鍵がある ! てな読み方をして楽しめる訳です。
しかし、やはりつまんないものはつまんない、と私は思うのです。読むのキツーって感じなんすよね~。
この前期短篇集、『初恋』『クリスマスと結婚式』『ポルズンコフ』『弱い心』『鰐 パッサージュにおける突拍子もない出来事』の6篇です。
一部は再読なのにもかかわらず、まるで覚えてないし・・・最初の三作あたりは、しんどいなーと思いつつ読んだのですが、『弱い心』はちょっとおもしろく、次の『鰐』、これが実におもしろかったのでR。
カフカはドストエフスキーの事を言及しているし、当然影響を受けていると思いますが、もしかしたら、この作品、カフカに多大な影響を与えているのではないか知らん……。カフカにドストエフスキーのどの作品が好きか聞いてみたいっす。
*ネタバレしますよん
これ、鰐に食われた人が、やけに冷静なのが笑えるんですよ。
ココなんて、『変身』クリソツではあーりませんか。鰐の腹の中で答えるマトヴェーイチ。
「生きているよ、健在だよ」とイヴァン・マトヴェーイチは答えた。「それに、神さまのおかげで、なんの傷もつかずに呑み込まれたよ。ただ一つ心配なのは、このエピソードを上官がなんと見るかだ。なぜって、外国行きの切符を手にいれながら、鰐の腹へ入り込んだのだからね、あまり気がきいてないもの……」
鰐に食われてるんですぜ、あーた。それどころじゃねーだろと。
そして、奥さんや周りの人達の動きがまた笑えます。鰐の飼い主のドイツ人とか。んなアホな…て感じですぜ。
鰐の方が同情される、とゆー結末も、『変身』と共通の悲しいものが漂ってるとゆー気がします。
他のつまんない作品の中にも、やはりドストエフスキーだと思わせる、鋭い箇所があったりします。
以下『初恋』より引用。
幾たりかの人が、前面へはっきりと押し出された。悪態、陰口が横行したのはもちろんである。なにぶんこれが世界を支えているので、もしこれがなかったら、何百万という人が退屈のあまり、蠅のようにころころと死んでしまうだろう。
ドストエフスキイ前期短篇集 (福武文庫)
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