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ガルシン『あかい花 他四篇』 2005.8.27

岩波文庫 ガルシン『あかい花 他四篇』を読みました。
『あかい花』『四日間』『信号』『夢がたり』『アッタレーア・プリンケプス』

どれも実に印象深い短篇でした。

●あかい花●
これがまたまた、想起したのがカフカです。
ゴーゴリの『狂人日記』も連想しちゃいました。
燃えるようなあかい花に、世界のありとある悪が集まっていると思い込み、正義感に燃え、それをむしり取って殺してしまわねばならないと思い込む。ちとドン・キホーテ的でもあると思います。

●四日間●
ある1人の負傷した兵士の淡々とした四日間の話。
派手な銃撃戦やら何やらよりも、よほど戦争の悲惨さを伝えていると思いました。

●信号●
これまたカフカ的 !

●夢がたり●
ちとラ・フォンテーヌのような…。

●アッタレーア・プリンケプス●
動物園、ペットの犬、もうあらゆる生き物に対する人間の仕打ちを、キョーレツなアイロニーでもって伝えている作品だと思います。

今まで未読でしたが、ガルシン、すごく惹かれる作家です。
ガルシンは、精神病院にも何度か入り、発狂の恐怖に怯え、発作的に階段の上から飛び下り自殺を図ったそうです。そして脚部に致命傷を負い、五日苦しんだ後に息を引きとったそうです。
友人の「痛むか」という問いに、彼は心臓を指さしながら、「ここの苦しみに比べれば、こんな痛みは何でもないけ」と答えたと伝えられるそうです。(「あとがき」より)


紅い花 他四篇 (岩波文庫)紅い花 他四篇 (岩波文庫)
(2006/11/16)
ガルシン

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スティーヴン・キング『IT』その4 2005.8.26

その1で「スティーヴン・キングって人は、いつまでも少年の時の心を忘れない人なんじゃないでしょうか。」と書きましたが、印象的な文の引用をひとつ。

奇蹟というものは美しいものであれ恐ろしいものであれ、起こるものだと考えてよいだろう。まあ、だいたい、しかし奇蹟がこの世界の活動を停止させてしまうことはけっしてない。朝の十時にすばらしい奇蹟が、もしくは恐ろしい奇蹟がとつぜん起こって、正午にチーズバーガーをひとつかふたつ食べるという日常生活はまったく変わらないのだ。
 だが大人になると、それががらりと変わってしまう。クロゼットになにかがひそんでいる、なにかが窓をかりかりひっかいていると思いこんでベッドでぱっちり目を開けているようなことはなくなる……だがなにかが、合理的な説明のつかないことが起こると、回路が焼き切れてしまう。脊椎の軸索や神経の樹状突起が熱くなる。びくびく怯えてがたがた震えて、想像力が踊り狂って神経をすり減らす羽目になる。起こったことを日常生活に溶けこませることが不可能になる。消化しなくなる。それがたえず頭にうかんでくる。毛糸の玉にじゃれつく子猫みたいに、頭をつんつんと突つく……そして最後には、気が狂うか、神経が機能を果たすことができないような状態に追いこまれる。


「解説」で、キングのインタビューがちょこっと出ています。そこから引用。

「--前略-- しばらくの間、トロールに想いを馳せていると、それがほかのアイデアを繁殖させ始めた。ひとつには、どのようにして子どもは大人になっていくのか、何が子どもを大人にするのか、どのようにしてぼくたちは変わるのか、たとえば、その事実として自分たちの顔の変化があげられる、といったものだった。顔が変化するとき、頭の中身も変わるのだろうけど、いちどきにそうなるわけではない。過去に戻って、子どもの頃の感覚を探索できる機会がある。大人になっても突如として湧き起こる恐怖だ。こうしたことをひとまとめにして表現する方法を考えた。その成果が『IT』なんだ。その本には、フランケンシュタインの怪物が登場する。狼男も出てくる。吸血鬼やミイラ男もね。まったくすばらしいよ。なにもかもが詰め込まれているんだ。いわば、書物の形をしたエピック・ホラー映画さ」

小説『IT』は、1981年9月9日に始まり、1985年12月28日に書き終わったそうです。
その間、他の小説も併行して書かれたそうですが。

   



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スティーヴン・キング『IT』その3 2005.8.25

*ネタバレ注意

これこれのつづきです~。

この小説、ピエロのペニーワイズが実にぶきみでいい味出してます。
そして、もしかしたらこれのモデルなんでしょか?ピエロの殺人鬼 (しかも少年達) っつーと、とーぜん浮かぶのがこの人です。

もう、こりゃ、ピエロ見たら殺人鬼って連想しちゃうじゃないっすか。

後半に入ると、ITとの戦いシーンが、1958年と1985年を行ったり来たり、めまぐるしいです。
それも、いい所で途切れるんですよ。連続ドラマ見てるみたい。
ここは長くて、ちとうんざりもしちゃったんですけどね。
んで、少女時代のベヴァリーの、皆の気持ちがバラバラにならないようにと、自らやったアレ、アレはちょっとないんでないの~?と思ったですよ。なんか違うんでない?
繰り返し思ったのは、ベン・ハンスコムが可哀想だと言う事。
彼こそ理想の男性ではないっすかっっ。少年時代はデブだったにしても、そのルックスでさえ、大人になったらモデルのようにかっこいくなったみたいだし、ベヴァリーを愛する強い気持ちが素晴らしく、他の人に対しても、常に思い遣りを忘れず、そんでもって、すんごい頭が良くて才能があるなんて、文句のつけようがないオトコです。
それなのに、よりによって、まだビルがいーんかい、あんたは ! とベヴァリーに向かって言いたかったですよ。ベンがかわいそすぎる・・・。少女時代のアレだって、ベンにしてみたら、辛いでしょう。

ベヴァリーが恋した、どもりのビルことビル・デンブロウは、キング自身がモデルな感じですよね。
後に売れっ子ホラー作家になるし。
キングの幼少時代はどもりだったのでしょうか。その辺、ちと知りたいっすね。

どーもやはり、うまくまとまんないのですが、<その4>へと続きます。

   



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スティーヴン・キング『IT』その2 2005.8.24

*ネタバレ注意

ちと間があいちゃいましたが、コレの続きです。

この小説、1958年と1985年が交差し、時間的にも目まぐるしく前後するので、どう書いてよいやら、むずかしっす。

1957年のビル・デンブロウの弟ジョージイの事件、時は現代に移り、マイクがかけた6人への電話から始まるのですが、電話の所はちとかったるかったです。しかし、ココが大変重要であり、そこから話が過去になり、7人それぞれの事がちゃんとわかってくると、これが実におもしろいのです。

紅一点のベヴァリーは、父親から虐待されて育ち、その後も父親みたいな男とばかり付き合い結婚してしまうのですが、コレ、心理学的に何かありそうですよね。
エディ・カスプブラクも、あれほど縛られて嫌だった母親とクリソツな人と結婚しちゃうし。
そして、ちょこっとですが、パトリック・ホックステッターと言う、いかれたのが出てきますが、この人なんて、典型的なサイコパスですよね。
3巻のP.366あたりからです。
この当りは、昔マーダーケースブック買ったり、ロバート・K・レスラーの本読んだりした自分には、実に興味深いっす。

診断名サイコパス サイコパスの犯罪
サイコパスという名の怖い人々

FBI心理分析官 FBI心理分析官(2)
FBI心理分析官異常殺人者ファイル(上)
FBI心理分析官異常殺人者ファイル(下)

話の筋にはあんまし関係ないですが…このベヴァリーの狂った暴力夫、トム・ローガンとのえっちシーンでちと引用なんぞを。

トムも我慢しきれなくなり、ホワイトソックスのチーム打率を考えたり、チェスリー社との取引きを横どりしようとしているやつはだれだろうと考えたりして、なんとかもちこたえた。

笑える~。男性は長持ちさせる為に、こーゆー事するんでしょうか。あ、笑っちゃいけないっすね。ゴメンゴメン。

マイク・ハンロンのとーちゃんのウィル・ハンロンが実にイイです。次のセリフなんてイイじゃないっすか。

男の子は魚釣りにいく時間も必要だ、たとえほんとうに魚は釣らなくともな。

って訳で、まとまりなく<その3>に続きます~。


   



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スティーヴン・キング『IT』その1 2005.8.20

◆ノスタルジックホラー小説◆

これ、むかーしむかし、もう10年以上前だと思うんですが、今はもうなくなってしまった、家のすぐ近所にあった古本屋で、ハードカバー上下巻めちゃ安で売ってたんです。100円とか150円とか200円とか、そーゆー値段。その頃はブクオフなかったと思うし。
そんで購入したものの・・・すんごいブ厚いじゃないっすか。私、家であんまし読まずに、電車や職場で読む人なので、読もう読もうと思いつつ…10年以上の歳月が経ってしまいました。
んで、この前図書館で、たまたま文庫本4冊全部揃っていたのを見かけたので、借りてきて読んだのでした。今さらもいーとこですが。

スティーヴン・キングと言やあ、もう何っっの説明の必要もないくらいのベストセラー作家ですが、とにかく映画との結びつきが強いですよね。モノホンの名作からつまんない駄作まで。
エッ、これもキングなんですかいっ、てのが、ごろごろあります。こちらを是非見てみてください。これもそうなのか~ってのがいっぱいですから。
本人もひょっこりなにげに出演してたりする事もあるのがお茶目です。

んで、この『IT』ですが、これまた実に<映画的>な小説だと思いました。
視覚的とかそーゆーんじゃなくて、とにかく映画的なのです。
このまんま、映像化できるぢゃん、って感じ。画面が鮮明に浮かんできそうな。

これは1958年と1985年とが、交差しながら進行する小説なのですが、何度も思い起こすのが、非ホラーの『スタンド・バイ・ミー』。これは映画しか観てないんですが。
スティーヴン・キングって人は、いつまでも少年の頃の心を忘れない人なんじゃないでしょうか。
『IT』は『スタンド・バイ・ミー』のホラーバージョンって感じでした。

 

7人の友人の結びつき、彼等それぞれのはっきりしたキャラもすんごいイイし、ノスタルジックさに惹かれる小説です。

そんじゃ、またまた長いので、<その2>につづきます~。

   



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雨月物語/春雨物語/浮世床/春色梅暦 其の二 2005.8.5

目的が『雨月物語』だったので、他のは読まなくてもいっかなーと思いつつ、ちょっと読んでみたら、実におもしろくて、全部読んじゃいました。
『浮世床』は、コレ、落語とかの世界じゃないっすか。
・・・と思ったら、解説につぎのようにありました。

三馬の滑稽本は当時上昇期にあった落語、小咄を源泉とし、それと密着しながら成長し、『浮世床』では風俗批評のおもむきを呈するに至ったといえる。

この本には出てなかったですが、『浮世床』の前作の『浮世風呂』は、三笑亭可楽の落語から発想されたそうです。
「しょっちゅう、鯛ばかり食ってると、たまには、また、さんまの干物が食いたくなる勘定なんだろうナ。」なんて、最近でもよく使われる浮気の言い訳だし、「三十越して、道楽の味をおぼえたものはしまつにいけねえ。」なんてのも、現代の会話でもありますよね。

『春色梅暦』を書いた春水は、式亭三馬の弟子だそうです。
師の三馬から、読本や滑稽本を書く才能のないことを言い渡されたりしたらしいのですが、私はむしろ、こっちの方がすんごい楽しく読めました。
『春色梅児誉美』ともいうみたいです。
粋で色っぽい話なんですよん、コレが。三角関係だか四角関係だか、平行四辺形関係だか、多角関係だか…
浮気男どもがなかなかおもろいっすね~。
そして、かわいいエロが(・∀・)イイ!こんな感じ。

「アレ、お聞きなさいヨ。唄にさえあのように唄うものを、殊にお兄イさんは、米八さんがあるから、わちきのことは、どうしても思い出してはおくれじゃないヨ」
「ナニナニ、思い出すのは、忘れるという不実があるからだ。おいらは思いつづけだから、別に思い出すということはねえ」
「オヤオヤウソだヨ。お兄イさんが忘れる暇がないのは、米八さんのことさ」
 と、言いながら丹次郎の脇の下をこそごる。
「アレサ、何をする。くすぐったいわな。よしなヨ。ドレ、そんなら、お前のも、くすぐるヨ」
 と、横抱きにしたお長の袖から手を入れて、乳のあたりをこそぐると、お長か、
「アレ、くすぐったい」
 と、言いながら、顔を赤くして、丹次郎の顔をジッと見つめる。


連続活劇みたいな書き方で、実に楽しめました。ラストがこれまた、NHKのドラマのように、すべて片付きまる~く納まる所が、楽しいです。こーゆーのはね。


雨月物語・春雨物語・浮世床・春色梅暦 (1976年) (日本古典文庫〈20〉)

 

 

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雨月物語/春雨物語/浮世床/春色梅暦 其の一 2005.8.4

◆こーゆー冗談みたいに暑い日には、幽霊話がピッタシ?◆

ここまで暑いと、怪談でもホラーでもみんなかかってきても効かねーって気もしますが・・・

私、日本文学には疎く、古典日本文学なんつったら、もうサッパリな訳ですが、今度図書館で溝口健二の『雨月物語』をやるので、ちと観てみたいと思い、その予習にと図書館で借りてきました。勿論現代訳です。
うちにもあるみたいだけど、古文で書かれてるっつーからとても無理。
そんで借りてきたのが、河出書房新社 新装版 日本古典文庫20 『雨月物語・浮世床・春雨物語・春色梅暦』です。
『雨月物語』『春雨物語』上田秋成 円地文子・訳
『浮世床』式亭三馬 久保田万太郎・訳
『春色梅暦』為永春水 舟橋聖一・訳

『雨月物語』は、夏にピッタシな怪談ものですね。
とは言っても、出てくるのは恐ろし~い化け物ではなく。人情味溢れ、義理堅く、風情のある幽霊さんたちなのです。
なんて、これ程有名な話ですから、説明する必要もないかもしれません。
実に人間的であり、気持ちがすんごい伝わってくるんで、入り込んで読めてしまいます。
人の気持ちの繋がりの尊いことよのう。
どーもうまく伝えられなくてもどかしいんですが・・・
足立巻一の<解説>のことばをお借りします。以下引用。

 とにかくそうして秋成は独自の妖異世界を創造したのであるが、そこにこめられた真実とは、人間のやさしさと置き換えてもいいであろう。「菊花の約」に脈打っているものも類のないようなやさしさであり、「浅芽が宿」の宮木や「蛇性の婬」の豊雄や「血かたびら」の平城天皇もそうである。そのやさしさは、作者自身の性情のうちに湛えられていたようにみえる。

「蛇性の婬」なんて好きですねー。「菊花の約 (ちぎり)」とか。
「青頭巾」には、カニバリズムが出てきます。しかし、これがまた、人の苦しみを実に良く表現していて、切ないのです。
「貧富論」なんてのが、またおもしろかったです。お金に関するアフォリズムと言った感じでした。

『春雨物語』もすんごいおもしろいです。
「樊かい (「かい」の漢字がないです。コレです。)」が未完なのが残念です。つづきが読みたい~。

また長くなってしまったので、次回につづきます。


雨月物語・春雨物語・浮世床・春色梅暦 (1976年) (日本古典文庫〈20〉)

 

 

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60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
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