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【本】風と共に去りぬ その6 2006.7.31

◆スカーレット その2◆

よくぞ、ここまでアクの強い女性を主役にした ! と思う、スカーレット。
我が道をゆく、と言うタイプで、周りからは相当に嫌われます。
表面は、ほんっっとにヒドイ事ばかりしてるように見えるのですが、彼女がそういう手段に出るのも、全くジコチューな考えからでも物欲からでもなく、家族友人、全てを自分の肩に背負い、自分も決して飢えたくない、勿論家族にも決して飢えさせない、との気持ちからなんです。以下引用。

 ひもじさが、また彼女のからっぽな胃をかみはじめた。彼女は声を出して叫んだ。
(神さまが証人だわ。神さまを証人にして、あたしは誓う。あたしはヤンキーなんかに屈服しない。どこまでも生き抜いてみせる。そして戦争が終ったら、もう二度とひもじい思いなんかしない。そうだ、うちの人たちにだって、ぜったいにそんな思いをさせない。よしんば、そのために盗んだり人殺しまでしなければならないとしても----。神さまを証人にして、二度とひもじい思いなんかするものか)


「盗んだり人殺しをしてでも」と神様に誓う所が何とも面白い所ですが(^^;)、彼女は本当は、素晴しく思い遣りのある女性だと、私は読んでいて思いました。
自分が日焼けで肌がぼろぼろになるのも構わず、自分の日除けをメラニーに使う所なんて、感動ものでした。
彼女が皆を助ける為にしている事ひとつひとつが、その助けている家族達に批難されてしまう所が、実に皮肉で悲しいです。
しかし、メラニーだけは、スカーレットのする事に何1つ批難はしません。そして、彼女は正しいです。メラニーのような友達がいるって、実に心強いですよね。決して彼女は裏切らないし、スカーレットを悪く言う人達にも毅然と立ち向かうのですから。
そして、アシュレもまた、よくわかっているなあ、と思いました。以下引用。スカーレットの荒れた手を見て言ったセリフです。

 「ぼくは、こんなに美しい手を知らない」と言い、両方の手のひらに、かるく接吻した。
「この手が美しいのは、この手が強いからだ。まめは、いわば勲章なんだよ。スカーレット。そして、一つ一つの水泡は、勇気と自己犠牲の賞牌だ。この手はぼくたちみんなのため、きみのお父さん、妹さんたち、メラニー、赤ん坊、黒人たち、それから、このぼくのために、荒れてしまったのだ。---後略---」


    

 

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【本】風と共に去りぬ その5 2006.7.29

◆スカーレット◆

スカーレット・オハラというヒロインは、その後のいろんな例えに使われたのではないか、と思います。対照的なメラニーもまた、そうだと思います。
実は、阿部定事件本を日記にUPしている時に、私はこの『風と共に去りぬ』を読んでいる時でしたので、嫌がる方がおられるかもしれないんですが(^^;)、どうしても、阿部定との共通点を思ってしまいました。(^^;)
そして、松田聖子なんてのも、似てるなあ、と思ってしまふのです。こちらも嫌がる方がおられそうな…
彼女の場合、スカーレットを参考にしてるんではないか、と思えてしまいます。
結婚に対しての割り切り方なんて、まさに、だと思うんです。松田聖子の結婚ってビジネスだと思っていたので。(まあ、芸能人の結婚・離婚は、そういう面が多いとは思いますが)
それから、『嵐が丘』のキャサリンも。
「レットこそ私の魂なのだ」というセリフ、これはまさにキャサリンと同じではないでしょうか。

(レットこそ、あたしの魂なのだ。それなのに、あたしは、いま彼をうしなおうとしている。もしレットをうしなえば、ほかになにがあっても、なんの意味もないのだ ! お友だちだって、お金だって----なんだって。レットがあたしのものになりさえすれば、また貧乏に落ちこんでも平気だ。そうだ、また寒さや、ひもじさに苦しめられても、すこしもかまわない。でも、レットだけは----ああ、彼だけは)

上のように思えた彼女は、あらゆる苦難を乗り越えて成長した結果であり、この小説は、スカーレットの成長の記録でもあると思うのです。
気付いた時には失ってしまう、という悲しみの中にも、何か希望が見える所が、嬉しいです。

    

 

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【本】風と共に去りぬ その4 2006.7.27

ここで、ちと、このタイトルのことなんぞを取り上げてみようかと思います。
それは、2巻で出てきます。以下引用。

 タラは、まだ無事なのだろうか? それとも、タラもやはりジョージア州を吹きまくった風と共に去ってしまったのだろうか?

そして注解を引用します。

この小説の原題 Gone with whe Wind とおなじ表現がここだけにさりげなく使われている。これは英国世紀末の詩人アーネスト・ダウスンの詩『シナラ』の一節にある詩句で、ミッチェル女史は、戦争という大きな嵐による古い南部文明の死とよみがえりを主題にした自分の小説の題名にこの詩句がぴったりだと気に入り、出版まぎわに変更したという。

スカーレットが、自分にとって本当に大切だとやっと気付くと、それらは失われていく、という、彼女の過酷な運命が、このタイトルにも表れているのではないか、と思いました。

ここで、ちょっと上の文と関連はないのですが、良いなあ、と思った表現を引用したいと思います。(ちと、これを引用するきっかけが見つからなかったので…)

胸の奥の、こつんとした小さなせつなさが、だんだんのどもとにこみ上げてきてかたまりになり、いまにも涙になりそうだった。

こういう事、あるなあ、と思いました。

    

 

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【本】風と共に去りぬ その3 2006.7.26

◆メラニー◆

美徳と善の人メラニーが、ことごとく、正反対のようなスカーレットに迷惑をかける所はおもしろいです。
ここまで散々な目に合わされるって、スゴイっすよね…。
戦時中なのに、子供が欲しいと願い、自分の身体の事を考えたら、当然子供が出来たら周りにとんでもなく迷惑をかけると、考えたら判りそうなものだと思うのですが、それでも子供をつくったメラニーって…実はエゴイストなんじゃないかと、この時は思いました。

この時のスカーレットは、ほんっっとにスゴイです。
そして、物事がことごとく悪い方に行くんですね。ことごとくツキがなく。
全てがスカーレット1人の肩にのしかかってきて、あまりに酷だよ~マーガレット・ミッチェルさん ! と思ってしまいます。

しかし、メラニーのその後がスゴかったです。彼女は受けた恩を決して忘れる事はありませんでした。受けた以上のものを返していく人なんです。
そして、弱い身体でいながら、精神的には実に強い所を見せるんですね。女神のように暖かくやさしい性格でいながら、決して周りに流されたり媚びたりしない、強さと勇気を持っています。

そんなメラニーの素晴しさに、全く気付かないスカーレットに対し、レットは流石です。

「きみは人間についての直感力がない。安っぽい人間と偉大な人間を区別する能力がない。ときどきおれは思うことがあるが、きみがこれまで接したうちで、偉大な貴婦人といったら、きみのお母さんとメラニーさんだけだろう。しかも、そのどちらからも、きみはなんの感銘もうけないようだ」

この「人間についての直感力」、私も欲しいです。(^^;)

    

 

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【本】風と共に去りぬ その2 2006.7.25

◆アシュレ◆

アシュレという人物は、結構イライラさせられます。
この人が、きちんとスカーレットをふっちゃえばいいものを、なにか煮えきらないじゃないっすかっっ。
メラニーという、これ以上ない素晴しい奥さんがいるのに、何考えとんの?って感じなのですが・・・、アシュレはスカーレットの事を、その魅力を、実に適格に捉えているんですね。
以下、アシュレのセリフより引用。

「--前略-- だが、どうしてぼくがきみを愛さずにいられただろう----生活にたいしてぼくが持っていないあらゆる情熱をもっているきみを ! ぼくには不可能なほど、はげしく愛し、はげしく憎むことのできるきみを ! きみは、まるで火のように、風のように、自然現象のように、本性そのままだ。--後略--」

スカーレットと結婚する最初の2人の男みたく、勘違いしてないですよね。
彼等は、結婚する為に女らしく見せる演技に、コロッと騙された訳ですから。

それに対し、スカーレットは、まるでアシュレの事がわかっていなくて、少女が芸能人に抱く憧れみたいな、幼稚な恋心を、ずーーっと持ち続けます。
こういうスカーレットにも、結構イラついたりするんです。なんでまだわからんの~?と。そこがこの小説のおもしろい所でもあると思います。以下の文が、それを適格に表しています。

彼女の恋は、自分に理解できない男性、自分にはない賛美すべき要素をことごとくそなえた男性にたいして、少女たちがいだくあの憧憬とおなじものだった。彼女にとって、彼はいまだに、うら若い少女の夢みる理想の騎士だった。

アシュレに戻りますが、南部人皆が、戦争を肯定的に見て盛り上がっている中での、このアシュレのセリフは、立派なものだと思います。

「あまり興奮することをやめ、すべからく戦争はさけたいと思います。世界の悲惨の大部分は、すべて戦争が原因です。しかも戦争がすんでしまうと、なんのために戦争をしたのか、だれにもわからなくなるのがつねなのです」

2巻では、戦争に行っているアシュレのメラニーへの手紙が出てきます。
スカーレットの変化を思う度に、このアシュレの言葉を思い出します。

 ぼくは危険をおそれるのではない。捕虜になることも負傷することも、おそれるのではない。たとえ死ぬときまっても、死がこわいのではない。ただ、ぼくがおそれるのは、この戦争が終っても、われわれは二度とふたたびむかしながらの時代にもどれないというそのことなのだ。

そして、これはまさに戦時中の日本ではないか、と思いました。同じくアシュレの手紙からです。

ぼくたちは独立戦争当時の旧式銃で、北部の新式ライフル銃と戦っているのだ。 

まさに日本の戦時。

    

 

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【本】風と共に去りぬ その1 2006.7.24

この映画は、もう何度観たかわかりません。

 

レット・バトラーなんて、すんごい理想の男性だし、スカーレットの強さにすごく惹かれたり。映画は大好き。本はいつか読もうと思っていたのですが、たまたま図書館に行った時に、文庫本が5巻全巻揃っているのを発見し、借りてきました。
これって、世界で聖書の次に多く読まれてるらしいですね。スゴイです~。

まず、映画では、それ程出て来なかったと思う、スカーレットの両親の事が、事細かに描かれています。
特に父親のジェラルドは、スカーレットの人格形成に、深いかかわりがあるんですね。
アイルランド人だという事も、なかなか重要です。ジェラルドは実に愛すべき人物です。
以下は、その父親ジェラルドのセリフです。

「土地こそは、この世の中でいつまでも存在するただ一つのものだぞ」「なぜなら、土地こそは、この世の中で永久に残りうるただ一つのものだからだ。これを忘れるな ! そのために働く価値のあるただ一つのもの、そのために戦う価値のあるただ一つのもの----そのために死するにあたいするただ一つのもの、それが土地なんだ ! 」

映画でも、スカーレットがタラへ行こうと決心する場面が、実に魅力的でしたが、3巻にはこんな文章が出てきます。

 タラをながめると、なぜ戦争が起ったかが、いくらかわかるような気がした。レットは、人間が戦うのは金のためだと言ったが、それはまちがいだ。人々は、鍬でやわらかくたがやされた畑地のため、短く刈られた緑の牧場のため、黄色い水がゆるやかに流れる川のため、マグノリアの木立ちのなかの涼しい白堊の邸宅のためにこそ戦うのだ。戦う価値のあるただ一つのもの、それは彼らのものであり、彼らのこどもたちのものである赤い大地----彼らのこども、こどものこどものために綿花を生みだす赤い大地だった。

この父と娘の持っている、強い郷土愛、素敵です。彼等のアイルランド人気質が私は好きです。

馬に乗って垣根をとび越す父ジェラルドを、笑って見ている少女スカーレット。
その眩しさが、後半の彼女との見事な対比を描いています。

そして、それぞれの人物の描き方が、ほんっっとに見事です。
スカーレットの欠点もメラニーのような善人の嫌な部分も、アシュレのへなちょこぶりも、実は鋭く正しい視点を持っている所も、細かく描かれ、人間というのは一面的に見られるものではないと感じさせられます。
アシュレだって、ダメ男のようでいて、本当は時代と状況が違えば、素晴しい文化人になるべき人であると、恋敵のレットがちゃんとわかっていたりするんです。
マミーやプリシーやピティパット等の描き方も、すんごい良いですね。

レットとアシュレは、表面的には全く正反対のようでいて、実に似ているんですね。
それは、後半、レット・バトラーのセリフによっても、またアシュレのセリフによっても語られている所ですが。
世の中を客観的に正確に見られる鋭い目を2人とも持っているんです。
その辺の所を次回書きたいと思います。

    

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『がばいばあちゃんの幸せのトランク』その3 2006.7.16

私は、B&Bが活躍していた漫才ブームをリアルタイムで知っています。(「もみじまんじゅう」ってネタがおもろかったんだよね~よく覚えてにゃいけど。)
すんごいエネルギーだったなあ、と思います。
もしや、北野たけしが漫才師だったって知らない方もいらっしゃったりして?とフと思ったのですが・・・ツービートってゆーコンビだったんですよ~。
当時のそのたけしの言葉は、流石じゃ、と思いました。

「おい、洋七。俺ら今、お笑い番組が増えてこんなに売れてるだろう? ということは、ドラマとか歌番組が減ったんだよ。一日二十四時間は一緒なんだからさ。俺たちが売れたお陰で、歌手とか役者が犠牲になってんだ。だから、俺らにもそういう時期がきっと来るぞ。覚悟してやんなきゃな」

明宏は、人気絶頂期に遊び歩き、半年も家に帰ってなかった時があったそうで(-_-;)、「叱られるかも」とビクビクしながら帰ると、
「あら、お父さん、お帰り。お風呂わいてるわよ」
と奥さんは言うんですよ。めちゃめちゃ人間出来てるじゃないっすかっっ。

今のお笑いブームと比べ、あの漫才ブームは、すごくテンポが早くてうるさかったと思います。(^^;) (爆笑してましたけど~私も若かったし。)
ほんとにあのブームは凄いものでしたから、やってる方のストレスも相当なものだったのではないでしょうか。ありゃ病気にもなるわな、と思います。
洋七がストレスで病気になり、医者から、仕事を辞めるか、入院して治療するか、選択を迫られた時、奥さんはこう言ったそうです。

「もう、いいじゃない。こんなに働いてきたんだから。売れたのなんてオマケよ。売れないのが普通なんだから。何年でも休めば?」
「病気に逆らっても仕方ない。それは季節に逆らうのと一緒。無理よ」


がばいばあちゃんが乗り移ったかのようなセリフだと思いました。

がばいばあちゃんも、明宏のお母さんも、テレビに出た事があるそうです。以下引用。

 かあちゃんと一緒に『オールスター家族対抗歌合戦』に出場もした。
 歌手志望だったというかあちゃんは、テレビで歌を披露できたことがとても嬉しかったようだ。それに、歌が本当に上手で、三回出場して三回とも歌唱賞をいただいた。
 それから、ばあちゃんには、佐賀から『笑ってる場合ですよ ! 』に生出演してもらったこともある。


『笑ってる場合ですよ ! 』は『笑っていいとも』の元の番組ですが、これは見ていたので、もしかして、私もがばいばあちゃんを見てるかもしれないです。この場面って残ってないのかなー。見たいです~~~。


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『がばいばあちゃんの幸せのトランク』その2 2006.7.14

『島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』その2』の所に書いた、例の「スーパーマーケット」の話、『佐賀のがばいばあちゃん』では、実に明るく描かれていましたが、その影では、明宏も結構辛い思いもしていたようです。
お金がなくて、川から燃料にする木ぎれや木っ端を拾い上げていると、「拾いや」とからかわれたりもしていたそうです。
そんな、今までには知らなかったエピソードも出てきます。

少年時代の辛い思い、怪我で絶たれた野球選手の夢、いつもいつも頑張ってきたのに、そしてやっと漫才という道を見つけて、精一杯がんばってきたのに、と、漫才の相方に相次いで辞められた明宏は、ばあちゃんに電話をかけて、そのどうにもならない思いをぶつけます。
その後ばあちゃんから来た手紙が良いです。一部引用。

 人間には偉い人なんか、いません。
 けれど努力すれば、すごい人にはなれます。
 どうか、ふたりで支え合って頑張ってください。
 いつか漫才で売れる瞬間を、ふたりで味わう時が来る。ばあちゃんは、それを心から信じています。
 今はつらくても、頂上に着けば、きっと真っ青な海が見られるよ。

 コツコツやってもなあと思う前にコツコツやれ ! !
 コツコツの先に成功がある


「コツコツやってもなあと思う前にコツコツやれ」って、ばあちゃんらしい、いい言葉ですよね。

その3につづきますねー。


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『がばいばあちゃんの幸せのトランク』その1 2006.7.12

がばいばあちゃんの幸せのトランク『佐賀のがばいばあちゃん』『笑顔で生きんしゃい』の続編。
同僚が貸してくれました。

これは、明宏の大胆なかけおち~夫婦の話中心で、がばいばあちゃんはあまり出て来ないのですが、実に良いかかわり方をしていて、これまたじ~んと来てしまいますぜ。

20歳でかけおちをする訳ですが、ほんまかいな?っつー話です。
何の予備知識もなく、仕事も住む所もないままに、いきなり2人で東京に行くって無謀すぎてビックリです。
そして、フツーにきちんと仕事をすれば、誰も反対する訳ではなかったので、なにも駆け落ちする事ないのに~と思いながら読んでいましたが、この駆け落ちがなかったら、漫才もやってなかったんだなあ、と思うと、何か運命を感じます。
それにしても、なんつー明るい駆け落ちなのかと・・・。明宏の家族がまた冗談みたいな人達だし。

そして、この奥さんが、ほんっっっとにいい人なんですよ。
がばいばあちゃん2世と言ってもいいような性格の方です。似てると思いますよ~。

ばあちゃんだけは、最初から反対もせず、「お前の好きにやれ」と言っていたのですが、ずっと影からこの2人をささえるんです。
次のがばいばあちゃんの言葉、いいではないですかっっ !

「結婚はね、ひとつのトランクをふたりで引っ張っていくようなもの。その中に、幸せとか、苦労とか、いっぱい入ってるの。絶対、最後までふたりで運ばんといかんよ。ひとりが手を離したら、重くて運ばれん」

この言葉通りに、明宏はトランクを買うのです。実にストレートとゆーか…(笑)
そのトランクが、最後までいい役割を果たすんです。ここの所、文章うまいなあ、と思いました。

その2につづきます。

その他、がばいばあちゃんについて書いたものはこちらから。

DVD出てるんですね ! (早い…)
島田洋七原作の心温まるハート・ウォーミング・ストーリー!東映 佐賀のがばいばあちゃん

佐賀のがばいばあちゃん がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい! がばいばあちゃんの幸せのトランク

佐賀のがばいばあちゃんのレシピ がばいばあちゃんの贈る言葉 佐賀のがばいばあちゃん愛蔵版



漫画です~
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清水正『阿部定を読む』その5 2006.7.7

◆阿部定の孤独◆

これも実に言えてるなーと思いました。この事件に対する大勢の方々の反応の不思議さを、言い表しているんでないか、と思います。(2つ引用)

 阿部定の供述を読んで、彼女が吉蔵を殺したこと、彼の陰部を切り取ったこと、その陰部を胸懐に抱いて逃亡したこと、そういった言わば犯罪の事実に関して彼女が深い罪の意識に苛まれていたと感じる読者はほとんどいないのではなかろうか。彼女は吉蔵を殺した、それは紛れもない犯罪なのだが、しかしこの犯罪は妙に説得力のある自然性を獲得してしまっている。---中略---
 阿部定は自分の性愛的欲求を全肯定しているかのようである。性愛的欲求こそが人間の生きている唯一絶対の証だといわんばかりに、阿部定は吉蔵との濃密な関係にのめり込んでいった。


吉蔵殺しは金目当ての殺人でもなければ、怨念がらみの殺人でもない。阿部定は純粋に、惚れて惚れて惚れ抜いた吉蔵を永遠に所有したかった、ただそのためだけに吉蔵を殺してしまった。この <純粋> と <無垢> が、世俗の垢にまみれて生きるほかない多くの人間に衝撃を与え、感動を覚えさせたのである。

『阿部定正伝』に、出所後の阿部定の事が、わりに詳しく出ていたのですが、とても孤独な人だったんだなあ、と感じました。
次の一文は、定の孤独をよく言い表していると思います。

 生の側に一人ぽつねんと残されたのは定である。もはや吉蔵の <死> を <生> の側へと奪回することは不可能である。この不可能が阿部定にとってどうして絶望とならなかったのであろうか。それは、阿部定が求めたのが吉蔵との永遠の一体化ではなく、絶対的な征服であったからではなかろうか。


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清水正『阿部定を読む』その4 2006.7.6

◆そして事件は起こった◆

その3につづき、阿部定の特徴をよく捉えている文を。
そして何故この事件が起こったのかを、なかなかうまく捉えていると思います。

 阿部定が幼年時代、幼馴染みの仙子ちゃんの博多人形をつかんでどうしても離さなかったというエピソードに端的に現れていたように、阿部定は自分のわがままで他人がどんなに迷惑をこうむろうが全く意に介さないという鉄面皮なところがある。また、阿部定は親の金からはじまって、その後も様々な所で様々な物を盗んでいる。阿部定はひとのものを盗むことに良心の呵責など覚えたことはない。欲しいものはどんなことをしてでも手に入れなければ承知しない性分なのだ。妻のオトクから <吉蔵> を奪い、吉蔵の <生命> を奪い、吉蔵の死体から <ペニス> を奪った阿部定の半生は、まさにひとのものを盗み続けた半生であった。

まさにその通りだと思います。
定の独占欲、支配欲って、この事件のポイントだと思うのです。
以下の意見も、なかなかおもしろいです。

 阿部定は吉蔵との <愛> を生き尽くしたというより、<性愛> を生き尽くしたのであり、しかも、阿部定にとって吉蔵との <性愛> は独占欲の終局的な発揮としての殺人である。殺人による吉蔵の <無> を現出させることでしか、阿部定は <安心> を得ることができなかった。
 阿部定は欲しいものを壊すことでしか <所有> できない。阿部定は吉蔵を生かすことができない。阿部定は吉蔵との普通の暮らしを共にすることができない。<生かすこと> <暮らしを共にすること> は阿部定にとっては <生温いこと> だったのだ。


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清水正『阿部定を読む』その3 2006.7.5

◆阿部定という人◆

今迄読んできた本と全然違い、清水正さんは、実に冷静に正しく定の事を判断していると思います。以下の文など。

 <独占> を願いながら、阿部定が手に入れたのは <無> である。阿部定の <殺し> の行為の底には、完全に独占できないのであれば完全に <無> にしてしまおうという、デモーニッシュな悪意が潜んでいる。自分も吉蔵に触れることができないが、<外の女> も吉蔵に触れることはできないというわけである。もしかしたら、阿部定は吉蔵に対する <愛> よりも、<外の女> に対する復讐心のほうが強かったのかもしれない。

まさにそうだと思うんですよ。定の吉蔵に対する気持ちは、勿論愛も強いのだとは思いますが、独占欲がかなり占めているのではないかと。
定は、小さい頃から、欲しいと思ったら何が何でも手に入れなければ気がすまない少女でした。
そして、以下、2つほど引用しますが、定という女の性質を、実にうまく捉えていると思います。

 ここに特徴的なのは、阿部定は盗られた側の人間の気持ちをほとんど全く考慮していないことである。金が欲しい、だから盗んだ。美しい着物や指輪で着飾って遊びに行きたくなった、だから無断借用した。ただそれだけのことである。そういうことをしたら警察沙汰になって親兄弟はもちろん、様々なひとたちに迷惑がかかるなどということは考えない。実に行き当たりばったりに、その時の欲望に素直に従っている。無邪気と言えば無邪気、バカと言えばこれほどの単細胞のバカもいない。しかし、これほどあっけらかんと自分の快楽原則に忠実に生きられてしまうと、そのこと自体が感動的である。

 阿部定が大宮五郎のことを思い、大宮五郎の家族のことを思うなら、逮捕後彼について何一つ供述しないという態度を貫くこともできたであろう。が、すでに見てのとおり、阿部定は訊問者に訊かれもしないことまで微に入り細を穿って供述している。阿部定は自分と関わった人間に対して少しの容赦もしていない。正直に供述するということはそういうことを意味する。

そうそう、そうなんだよーーとハゲしく同意 ! !

最初は2册ぐらい阿部定事件についての本を読んでみたいと思った程度だったのですが、読んでいるうちに、納得できない部分も多々ある事もあり、また次々と読む程のめり込んでいく自分が不思議なのですが、阿部定という人には、利己的で激しく女性的な、小説のヒロインにもなり得る不思議な魅力があるのかもしれません。
ここまで欲望に忠実だと、あまりに潔くて嫌う気にもなれないのです。身近にいたら嫌いかもしんないけど…

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清水正『阿部定を読む』その2 2006.7.4

◆吉蔵という男◆

映画『愛のコリーダ』を観た時から、そして阿部定の予審調書を読んで思ったのは、吉蔵はお定に殺されてもいい、或は殺されたいと思っていたのではないか、と言う事でした。
以下の清水正さんの文章は、そうそう ! 私もそう思っていた ! と強く思いました。

 もしもあの世にいる吉蔵に訊問できるなら、吉蔵に「その晩、お前は定に殺されることを予期していたか」と質問したいくらいである。なぜかと言えば、わたしは、吉蔵は阿部定に殺されることを確かに予感していたと思うからである。これは単にわたしの思い込みであるかもしれない。が、わたしがこの予審調書を初めて読んだ時から、吉蔵に対するイメージは、<殺される> ことをどこか心の奥深いところで強く願望している男なのである。

『愛のコリーダ』(感想はこちら。) は、これほどの愛があろうかとフランスに絶賛されたらしいですが、私がこれを観て感じたのは、定の愛は吉蔵のち×こに対して強いんでないか?って事と、好きな女の為なら殺されてもいい、首を締められて苦しい思いをしてもいいという、吉蔵の愛、やさしさでした。
男性とはやさしい生き物だと思いますが、この2人を見ても、男性・女性の特徴が、結構表れているんじゃないか、と思います。定が男性だったら、ああいう事は決してできなかったんじゃないかと思うのです。
それにしても、これほどにやさしい男がいたのか、と思うほど、吉蔵はやさしい男だと思います。

実に頷く事の多いこの本ですが、これはちと考え過ぎでないか?と思いました。

 阿部定は吉蔵を殺して永遠に吉蔵を他の女に触れさせることを不可能にした。しかし、吉蔵のモノを残したことで、阿部定は一番 <可愛いモノ> を他人の手に渡してしまった。これはいったいどういうことだ。ここに阿部定の恐るべき <嘘> が潜んでいないか。つまり、阿部定はひとにも自分にも惚れた吉蔵の <ペニス> は一番可愛いモノだと言いながら、実はコレを最も憎んでいたのではなかったか、コレを最も侮蔑したかったのではないか。

15の時に処女を奪われた事からの発想だと思いますが、私はやはり、定は <ペニス> が大好きだったと思います。

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清水正『阿部定を読む』その1 2006.7.3

阿部定はもういいかげんにしろっつー方、すみましぇん。(^^;)
読み出すと止まらんっすね、この事件関連は。

清水正の『阿部定を読む』。初めてまともな阿部定論を見たと思いましたぜ。ハゲしく同意 ! 状態がいっぱいで、付箋貼りまくってしまいますた。
ちゃんと客観的にこの事件や定の事を見ているとゆー感じ。
いままで読んだのが、変な定援護がやたら多かったものだから…。この事実を曲げる程の定援護の気持ち、わかるなあって男性がいたら、コメントよろしく~ ! (男性からコメントほしいなーと思ってるのです。いろいろ意見聞きたいなーと。首締めてち×ぽ切り取って持ち歩く女って、すんごい怖くないのかなーと思うんだけど。)

とりあえず引用しますが…

 阿部定の答えはわたしを驚かした。何よりもまず、その明晰さに驚いた。なぜ殺す気になったのかと訊かれて、これほど明晰に答えられることに驚いたのだ。この予審調書には言わばシナリオのト書きのようなものがないから、問いに対して阿部定がどのような表情や口調をもって対したのか、答えるまでにどのくらいの時間を要したのかを知ることはできない。が、この明晰な答えを読むと、訊問に対して躊躇なくすぐさま供述しているように思える。

そうそう ! 全く同じ事思いました。以前『阿部定正伝』その1で書きましたが、ほんとに定には迷いがないと感じます。

著者の清水正さんについては、『場』ドストエーフスキイの会の記録Iで、学生時代の頃の文章を目にし、大変気持ち良くおもしろく読んだのが初めでしたが、こういう形でこの方の本を読む事になるとは、おもしろいです。

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吉乃黄櫻

Author:吉乃黄櫻
ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
峰不二子、デボラ・ハリー、ウエンディー・O・ウィリアムスが憧れの人!

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映画の部屋も( `・∀・´)ノヨロシク

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