パゾリーニ『生命ある若者』その5 2007.1.31
我が侭でどうしようもないアメリーゴという男、リッチェットから無理矢理金を出させては賭けをして負けてばかり。
リッチェットは賭け場からソッと抜け出し、その後憲兵たちが来て・・・その後の話。
この小説で、死んでいく若者たちが何人か出てきて、どれも印象的でしたが、彼の死に様は特に印象的でした。以下引用。
リッチェットがフィレーニの家からずらかったあの滅茶苦茶な晩、カチョッタもほかの者もみな、ふんづかまっちまったが、それでも抵抗はしなかった。ところがアメリーゴは、憲兵ふたりに両腕をつかまえられて外へひっぱり出されたが、外廊下へ出たとたんに彼らを壁に叩きつけて、ポンと、二、三メートルの高さから中庭に飛びおりてしまった。そして片っ方の膝が折れっちまったのに、それでも何とか壁づたいに逃げ出してった。憲兵たちが発砲して、一発、肩に当たった。けれども、やつはとうとうアニエーネの岸までたどりついてみせたのだ。すんでのことに、そこでつかまりそうになったけれど、血だらけのまんま川んなかに飛び込み、むこう岸の畠にかくれてポンテ・マンモロかトル・サピエンツァのほうにでも逃げようとしたのだろう。しかし川のまんなかで気を失い、血と泥んこでどぶ鼠みたいになってるところを憲兵たちにつかまって署へ連れられてってしまった。こうして病院に移され、そこに監禁されることになった。一週間もして熱が下がると、やつはコップのかけらで手首を切って自殺しようとしたけど、そのときは助けられた。すると、十日ほどたってから、リッチェットとアルドゥッチョがこのむアックワ・サンタで出あう前のことだけど、今度は二階の窓から飛びおりたのだ。一週間ばかり苦しんだあげく、とうとうあの世にいってしまった。
「あした葬式があるんだ」と、アルドゥッチョが言った。
「あん畜生がよお!」と、ひどく心を動かされてリッチェットは低い声で嘆声を発した。
散々威張りちらしていたこの男、あくまでも支配されるのを嫌い抵抗する姿は、感動的ですらあります。
次回で最後です。
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