島崎藤村『破戒』 2007.2.28
ちなみに、何故『橋のない川』が途中までだったかというと、確か図書館でいつまで経っても次の巻がなかったとか、そんな理由だったと思います。コレも再び最初から、全部読みたいです。
そんな訳で、『橋のない川』を思い出したりしながら読んだのですが、『橋のない川』があまりにも可哀想すぎて、これなんてまだマシだなあ、なんて思ってしまいました。
とにかく暗い!という印象です。どうにもならない事をうじうじ考え込む事ほどムダな事はない、と思ってしまふのですが。
しかし、こうならざるを得ないのかもしれません。私などにも頭では理解できたつもりでも、心情的にはどうしてもわからない悩みがあるのだと思います。
「部落差別」そのもの事態、どうしても理解できないんですよね。祖先がエタだったから差別されるっつーのが。
人というのは、どうにかして自分より下の者をつくって安心したい心理があるようです。
うじうじと実に暗い丑松ですが、彼は見事打開します。
部落民である事を告白した時は、霧が晴れたようにパーッと明るい気分になりました。
実際は、あのように土下座をして謝らなければならなかった訳ですが、それすら私には、潔く感じました。(大方の意見はこれと逆のようですが…)
それまでは「隠しておいた方がいいよー」と思いつつ、あの告白に、読者の私の気分まで晴れたのだから、おもしろいです。
告白してからの、特に子供たちの、そして友人の銀之助や恋する志保、周りの人達の、全く彼に対しての見方を変える事のない、暖かい態度にホッとしました。
それまで誠実に生きてきた丑松の人間性が、エタと知れたところで、何も変わらないのです。
丑松は世間の偏見をなくす第一歩になれたのではないでしょうか。
悲しく暗い小説に、パーッと光がさした感じがしました。
橋のない川
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