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夏目漱石『三四郎』(再読) その2 2007.5.30

こちらのつづきです。
本文に三四郎は勉強家というよりむしろてい徊家なのでとあるのですが (「テイ」の漢字がありません)、この「てい徊家」訳注によれば、こういう意味です。

考えながらあちこち立ちさまようこと。

自分もかも~~。
次は、広田先生の話ですが、いるいる~~!と思いました~こういう人!
三四郎と与次郎の会話です。

「先生は東京が汚ないとか、日本人が醜いとかいうが、洋行でもした事があるのか」
「なにするもんか。ああいう人なんだ。万事頭の方が事実より発達しているんだからああなるんだね。その代り西洋は写真で研究している。巴理の凱旋門だの、倫敦の議事堂だの沢山持っている。あの写真で日本を律するんだから堪らない。汚ない訳さ。それで自分の住んでる所は、いくら汚なくっても存外平気だから不思議だ」


広田先生、しょっちゅう哲学の煙を鼻から吹いている所も好きです。(笑)
次の文は、まさに今全く同じ現象が起きてると思って、びっくりしちゃいました。

 「御母さんのいう事はなるべく聞いて上げるがよい。近頃の青年は我々時代の青年と違って自我の意識が強過ぎていけない。われわれの書生をしている頃には、する事為す事一つとして他を離れた事はなかった。凡てが、君とか、親とか、国とか、社会とか、みんな他本位であった。それを一口にいうと教育を受けるものが悉く偽善者であった。その偽善が社会の変化で、とうとう張り通せなくなった結果、漸々自己本位を思想行為の上に輸入すると、今度は我意識が非常に発展し過てしまった。昔しの偽善家に対して、今は露悪家ばかりの状態にある。――君、露悪家という言葉を聞た事がありますか」

この「露悪家」、おもしろいですよね。広田先生によれば、与次郎がその最たるもので、美?子、よし子も、一種の露悪家だそうです。ここのセリフはすごくおもしろいので、是非読んでみてください。上に貼った、ワイド版岩波文庫の169~170ページです。

   

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夏目漱石『三四郎』(再読) その1 2007.5.28

『それから』『門』と続く3部作の第1篇にあたるという、この『三四郎』、この前『それから』を読み、どう繋がるのだろうと疑問だったので、『門』を読む前に再読してみました。
その前に、映画を観て、あんなに原作はおもしろかったのに、なんてつまらないんだ、と思った事もありまして。(^^;)
八千草薫は良かったんですが、ちと映画のネタバレしますが・・・三四郎を愛していながら、他へ嫁に行くって設定が、そりゃぜんっっっぜん違うだろ!!と。絶対そんなはずないと思うんで。それに、三四郎がなかなか美青年なのも、そりゃ違うだろ、と叫びたくなりました。作者の意図がぜんっっぜんわかってないんじゃないか、と生意気ながら思った訳でありまして。
<解説>に出ていた、新聞連載がはじまる直前の、漱石が『朝日新聞』の担当者に宛てた手紙を引用します。

題名――「青年」「東西」「三四郎」「平々地」
右のうち御択み被下たく候。小生のはじめつけた名は「三四郎」に候。「三四郎」尤も平凡にてよろしく存候。ただあまり読んで見たい気は起り申すまじくとも覚候。
――長いので後略――


この小説、とにかく美禰子が良いと思うんです。ちょい悪女な所が、とっってもおもしろいです。やるなあ、と思います。
野々宮、その妹のよし子、広田先生、ごくごく平凡な主人公の三四郎など、キャラも良いし、序盤の一緒に泊まった女性から言われた言葉から、美?子に弄ばれる経過もおもしろいです。
それから『吾輩は猫である』にあるような会話のおもしろさが、これにもあると思います。
広田先生と与次郎が、影でいろいろ言っている事が、これまた、すんごいおもしろいです。

結局、三部作の一作目というのは、どういう意味なのか、良くわからないまま読み終えたのですが、脇役である広田先生が、『それから』の代助的だなあ、と思ったりしたのですが、解説を読むと、若くて純粋な青年を誘惑する美?子の<罪>という事なのでしょうか。
その美?子自身も、三四郎と同じく「ストレイシープ (迷える子羊)」である所がまた、この小説のおもしろい所だと思います。
次回、引用地獄・・・いや、今回はほんのちょびっとですが(^^;)、引用して終わります。



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佐野眞一『東電OL症候群 (シンドローム) 』その2 2007.5.25

作者が「ファラ・フォーセット似の女性記者」と称するバレリーさんの発言が、なかなか興味深かったです。

 バレリー 日本にはいいところがたくさんあります。アメリカに比べてとても安全ですし、アイヌなどの少数民族もいますが、基本的に単一民族ですから、アメリカほどアグレッシブではなく、みんな協調性があって住みやすい。しかしその一方、難かしいところもいっぱいあります。第一に個人の自由が確率していない。誰かが、人と違うことを言ったりやったりすると、すぐに批判を受ける。やはり単一民族ということが影響して、異分子を排除するという方向にある。異分子がいると、いじめに遭う。アメリカにももちろんいじめ問題はありますが、日本ほどシステマティックに、みんながターゲットにして……。
 佐野 寄ってたかってという?
 バレリー ええ、そうです。そういうことはアメリカではありえない。アメリカにはいつも自分とは違う「他者」が存在しているので、何かが排除されても、その者と同調する者が必ず現われる。日本はとても豊かな国ですが、それにもかかわらず、住むスペースがとても狭く、高い。そして通勤時間は長い。そのために、レジャー、遊ぶ時間があまりない。休みはたくさんあるけれど、みんなが一緒に休むので、本当に休むのは難しい。自分は外国人として日本に住むのはとても気分がいいのだけれども、日本人として住むのはとても難しいと思います。


休みは少ないと思うんですが・・・。
被害者が、東電から日本リサーチ総合研究所に出向させられた事があるのですが、その時のアルバイトさんの発言が、なかなかこの東電OL像に迫っています。まあ、もっといろんな人に聞いてみないとわからないとは思うのですが。(名前はやはり伏せ字にしときますか。別に良いとは思うのですが、1度ああ書いた以上は。(^^;))

「私は八七年の秋からリサーチのアルバイトをしていました。**さんのことはそのとき聞きました。今度、東電からすごく優秀な女性が出向してくる、って。けれど、**さんは仕事ができる人ではありませんでした。プライドばかり強くて、上司からすれば面倒な人だったと思います。経歴はたしかにエリートですが、協調性というものがまったくない。リサーチでの人間関係は全然うまくいっていませんでした。組織にとっては手に負えない人でした。とにかくコミュニケーション能力というものがまるきりないんです。
 **さんの主な仕事は、原稿を書き、印刷所からあがってきたゲラを校正する仕事でしたが、彼女は校正ではなく、そこで推敲してしまうんです。ですから、ゲラはいつも真っ赤っかで、いつまでたっても報告書は出ませんでした」


次は、「東電OL殺人事件」の読者数名と、作者が会って話した話が出ているのですが、その内の1人の発言が、被害者の二重生活の理由って、案外こういう事なのではないか、と私は思いました。

「女性にだって男の人と同じように性の衝動があります。もう少し若かったら、ソープランドに働きに出て、性のはけ口にしようと思ったこともあります。三十五歳で夫以外の男性との性の交渉をもとうと思ったのは、女性としてこのまま年老いていくのはあまりにも自分がかわいそうで悲しいと思ったからです」

 

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佐野眞一『東電OL症候群 (シンドローム) 』その1 2007.5.23

前作では、ゴビンダさん無罪で終わってホッとしていたのですが、いきなり「逆転有罪」から始まり、結構ショックでした。
続編のこの本、相変わらずと言うか、さらにエスカレートしている妄想、思い込み、自己陶酔のオンパレードでして、東電OLからだいぶ離れ、ゴビンダさんの裁判に関わった裁判官や判事の起こした買春事件に多くのページをさかれていて、かなりうんざりでした。(-_-;)
相変わらず感情的で、あまりこういう人格批判的な事は、やらない方が、事実のみを書いた方が伝わるのではないかと度々思いました。↓

 司法の重大な判断にあたっての村木のこの錯乱ぶりは、精神分裂症のそれさえ想起させる。村木はなぜ「引き裂かれた自己」に陥ってしまったのか。ゴビンダの再勾留が正式決定してから丁度一年後の平成十三年五月十九日、村木は児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で警視庁に逮捕された。

この「引き裂かれた自己」というフレーズが余程気に入ったようで、再びこのフレーズを目にした時には・・・・・・でした。(笑)

二つの決定の間に、どこからか村木を「引き裂かれた自己」に導くような強いプレッシャーがあったのではないか、と考えたくなるのが自然である。

その前の、しつこい朝日新聞批判もなんだか・・・・・・。

 最も厚顔だったのは朝日新聞だった。東京電力の社名にも遠慮してなのか、見出しになんと、「電力・OL殺害」という表現を使った。テレビの「電波少年」をイヤでも連想させるその見出しには、偽善がもたらす高の括り方と冷笑が集約されているようで、その醜悪さに思わず目をそむけたくなった。さすがに恥ずかしくなったのか、遅版で「渋谷・OL殺害」と訂正したのが、かえって情けなく笑止千万だった。
 ここで、私がこれまで殺された東電OLを****と書いてきた理由を一言説明しておきたい。実名報道はいまは亡き東電OLの「人権」に抵触するおそれがあるとの批判があることは十分承知の上である。にもかかわらず東京電力という社名と彼女の実名を使い、これからもそれをかえるつもりがないのは、彼女が自分の名前と勤務先の東京電力をどれだけ誇りに思ってきたかを私は知っているからである。


*いちおう実名の所を伏せ字にしました。
なんと勝手な言い分でしょう。被害者が所属していた会社や自分の名前に誇りを持っていた事と、プライバシーを守って名前を公表しないという事は、別問題ではないですか?
朝日新聞批判は、おかど違いもいい所という気がします。
逆転有罪となった時の裁判長が高木という人で、この本からの情報によると、この人はかなり曰く付きという感じです。
彼がこれまで手がけた事件は、被告や弁護人から冤罪が叫ばれている事件ばかりだとか。
あの狭山事件にも関与していたそうです。



前作を読んで手紙を送った読者何人かと、作者が会って話した内容が、いくつか出ているのですが、とりあえず引用。*名前は仮名です。

 鳥飼さんは昭和三十八年 (一九六三) 年生まれで、もうすぐ殺された**と同じ年齢になる。まだ独身である。結婚しない主義なんですか。そう尋ねると、また笑っていった。
「いや、そうじゃありません。でも、いくら結婚したいといったって、相手があることです。こればっかりは共産党の幹部のように自分の思い通りにはなりません」


こーゆー事言うやつ、いましたよ~~結婚とか関係ねーだろが!うざすぎっっ!
って訳で (どーゆー訳だ?) 次回へつづきます。

 

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佐野眞一『東電OL殺人事件』その3 2007.5.20

この事件を元にしたという小説『グロテスク』は、あまりにも現実離れしているように思い、どの程度が参考にされているのだろうと思ったのですが、被害者の高校、大学の同級生の話は非常に興味深かったです。

  

「彼女とは高一で同じクラスになりました。慶応の女子高は中等部からあがってくる人が約半分、公立中など外から受験してきた人が約半分で、私も彼女も公立中組だったので、親近感をもちました。ふっくらして背が高いなあ、というのが第一印象でした。公立中学出身者らしい生真面目さにも、私と同類の人だな、と、好印象をもちました。真面目でしたが、とっつきは決して悪くなく、この人となら話せると思いました。
 成績はいつもトップクラスでした。そういえば、女子高を受けたとき、風邪で三十八度何分かの熱を出し、前の晩は一睡もできなかったけど全然大丈夫だった、といっていました。中学時代は走るのも速かったそうです。身長も百六十五センチくらいあり、積極的に発言もするし、勉強もよくできるという学級委員タイプでした。レザークラフトが趣味らしく、皮でつくったペンシルケースや小銭入れをよくバザーに出していました。手先も器用だったんです。たしかアイススケート部にも入ってました」
 その後クラスがえとなり、彼女が次に泰子と会ったのは大学三年のゼミのときだった。
「高一のときのピチピチした印象と全然違うのでびっくりしました。私とは親しかったはずなのに、どこかこれ以上踏みこませないというようなところがあるように感じられました。ある一定以上近づくと殻に閉じこもり、他人には決して弱さをみせないという印象です。体もガリガリにやせてました。ゼミでもそのことが話題になり、拒食症にかかったのではないかという人もいれば、過剰なダイエットをしているのではないかという人もいました」


彼女がガリガリにやせていくのは、尊敬する父親の闘病から死に至るまでの頃だったそうです。
それにしても『グロテスク』で描かれているような、とんでもなくダサい人物像は見えてこないんですけどねえ。
終盤に出てくる、斎藤学さんという精神科医の話は大変興味深く、彼女の行為の謎を理解するのに、少し霧が晴れたという気がしました。

 A子さんという三十歳になる女性が、十四歳のとき父親に死なれ、そのショックから不登校など離人症性障害に陥る。
<おそらく思春期に入っていたA子さんは、父という異性に、今までとは違った感情を向け始めていたのでしょう。この感情は少女たちを不安で包むものですから、彼女たちはそのことをあまり考えないようにして、父親を避けようとするものです。大急ぎで、家の外の同世代の男の子に関心を向け変える娘もいます。この感情はまた母親への罪悪感を生みます。罪悪感は反転して、母親批判として表現されることが多い。一方で、この罪悪感は娘の心の内に取り込まれ、自分に対する苛酷な批判者「インナーマザー」 (内なる母) になります。
 インナーマザーは、自分の無能、怠惰、醜さを責め、いっときも心を休ませてくれません。これに取り憑かれた娘は、「仕事人間」になるか「何もしない完璧主義者」になるか、さもなければ「痩せた体を追求する拒食・過食症者」や「容貌にこだわる醜貌恐怖者」になります> (『インナーマザーは支配する』新講社)。



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佐野眞一『東電OL殺人事件』その2 2007.5.18

こちらのつづきです。
この本の大半が、被害者よりも容疑者の冤罪に関してページをさいている所は不満ではありましたが、これは知っておくべき事でもあると思いました。
日本という国は、平成に入ってまでも、まだこんな事をしてるんですか!と警察や裁判所のヒドさには呆れ返ります。
暴力も横行してるんですね。いやはや、ほんとビックリでした。
容疑者のネパール人青年は、どう考えてもシロでして、まず時間的に犯行に間に合わない次点で容疑者からハズされるべきではないですか。
すんごい強引に犯人に仕立て上げられちゃってるんです。狭山事件を彷彿させるヒドさです。

     

何が何でも、この人を犯人にしなければならなかったのには、何か裏があるのだろうな、と勘ぐらずにはいられません。
以下のように、客の中にはおエラいさんもいたようですから。↓

 警視庁詰めの新聞記者によれば、彼女のもっていたアドレス帳には大平正芳の三男で、現在、大正製薬副社長の大平明の名前と携帯電話の番号も書かれていたという。

平成っつーと、最近な感じがしてしまうのですが、そんな現代でも、こんなにヒドい逮捕や裁判があるという事は、是非多くの人が知っておくべき問題だと思います。
そういう点で、この本をお薦めします。
これは、はっきし言って日本の恥です。


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佐野眞一『東電OL殺人事件』その1 2007.5.16

実はこの事件、タイミング悪く外国にでも行ってたのか、別の事におわれてニュースも新聞も見ていなかったのかわからんのですが、ほとんど記憶にないのでありまして、当時は被害者のヌード写真まで出回ったというのにはビックリです。
何年も経ってから、飲み会で話題になったりして興味を覚えた訳ですが、そのまま忘れていた時に、同僚がこの事件をモチーフにしたという小説『グロテスク』を貸してくれたという訳です。

  

この小説は、私はあまり良いと思わなかったものの、東電OL殺人事件については俄然興味を持ち、佐野眞一のノンフィクションを図書館で借りました。
読んでみたら、興味のあるのは被害者に関してなのに、大半は容疑者のネパール人の話でした。それから、デジャヴがどうだとか、この人のネパール行きの苦労話だとか、どうでもいい無駄が多くて、ちとイラつきました。繰り返しも多いです。
それから、結構感情的と言うか・・・ノンフィクションは、冷静に客観的に淡々と書かれている方が説得力があると思うのですが。変に美化する所が感じられます。以下の文など。それは違うんでないかと・・・

手をかえ品をかえのセックス産業が横行する世の中にあって、命を張って客を直引きする泰子の立ちんぼ姿は、コンビニ感覚のセックスに比べ、神々しくさえみえる。

それから、この本を読んでいるのは圧倒的に女性が多いそうで、自分と同一視している方が多いとこの人は思っているようなのですが、そうなのかなあ?という感じがします。
何が興味を惹くかというと、やはり昼はエリートOL、夜は娼婦という、ブニュエルの『昼顔』のような二重性ではないでしょうか。



それから、これは、マスコミに報じられた彼女の行動の一端ですが、以下引用。

 コンビニエンスストアで百円玉を千円札に、千円札を一万円札に「逆両替」し、井の頭線の終電で菓子パンを食い散らかし、円山町の暗がりで立ち小便をする。

すんごい潔癖性で細かいながらも、ある面では羞恥心などが麻痺しているとしか思えない彼女の大胆な行動にも興味を惹かれます。でも立ちションって女性には無理じゃないっすか??路上で放尿って事なんでしょうけど。
「逆両替」は、空き瓶を集めて換金していたというのだからスゴイです。
その倹約ぶりは、テレビの「極めつけ!倹約生活」みたいな番組にでも出られそうな感じ・・・。以下引用。

 彼女は自分の方から「客」に電話をかけるとき、必ずコレクトコールでかけてきた。「客」がその理由を聞くと彼女は、「不在の場合、留守番電話になるので十円損する」と顔色一つかえずに答えた。

彼女の母親というのが、どうしようもないお嬢さんで (洗い物もろくに出来ないとかゆー話です。真偽はわかりません。)、尊敬する父親は大学生の頃に亡くなり、一家をささえていかなきゃと思ったという事ですが、収入は充分にあったという話です。年収一千万とかですぜ。
「お金を貯める」という行為も、強迫神経症的なものから来ているのではないかと思います。百円が千円になり、千円が一万円になっていく様がおもしろいのかもしれません。(体重が減っていくのがおもしろくなってしまう拒食症のように) 趣味のようにさえ思えました。何か思い込むと、それに縛られるという事は、自分もたまにあるので分ります。何かトラウマ的なものも、あるのかもしれません。
売春行為のきっかけは分りませんが、これも何か強迫神経症的なものを感じます。毎晩4人というノルマを決め、必ず最終電車で帰るという・・・。(哲学者カントのような、きちんとした性格だ…)
そして、セックスを好きじゃなかったという彼女の、相手かまわずに仕事をする、その行為も、どこか麻痺させたような面を感じます。
不思議と感情的な叫びのようなものは見えてこないんです。そういうのを無理矢理つくりだそうと作者はしているように思います。
ただ、麻痺するまでには、そういう叫び以上の心理的苦痛が、すっっごくあったと思います。拒食症で入院までしたそうですし。本当に痛々しく気の毒です。


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井原西鶴『好色五人女』 2007.5.11


好色五人女全釈
好色五人女

『好色一代女』目当てに借りた、集英社版『富岡多恵子の好色五人女』で読みました。ハードカバーです。
一代女が本当に「好色」であるのと違い、こちらは五人皆、一途に恋する女たちであり、「好色」とは違う感じでした。
実在の五人の女性を描いているそうです。以下、<解説> より引用します。

巻一は姫路でおきたお夏清十郎の悲恋物語。巻二は大阪天満の樽屋の女房と麹屋長左衛門との姦通事件。巻三は京都の大経師の女房おさんと手代茂右衛門 (実説は茂兵衛) との姦通事件。巻四は江戸の八百屋お七と吉三郎の悲恋物語。巻五は鹿児島のおまん源五兵衛の恋物語で、実説は心中事件である。すぐに演劇や歌祭文にとりあげられ、読者周知の話ばかりである。

巻三のおさんの話は、溝口の『近松物語』によく似てるなあ、と思ったのですが、やはり同じ話なのでしょうか。



「お夏の恋」より引用です。

 尾上の桜が咲いて、人妻たちは着物自慢、器量良しの娘をもつ母親は娘自慢で、花を見に行くのではなく、他人に見られにいくのが当世風の花見である。女は化粧や着物で化けるので、姫路城に住みついているという狐も、逆に女に化かされてしまうだろう。

にゃるほど~~!しかしこういう女性が増えると、花見客の楽しみも増えるというものですね。

お次は「おまんの恋」より、こんな色っぽい文が!

考えてみると、女の大事な場所にはだれもいやといえぬ落とし穴があって、お釈迦様も片足くらいは滑りこまれるかもしれない。

旧文で読んでみたい文でした。
最後に、うらやましすぎ~な源五兵衛の悩みの引用で終わります。

 源五兵衛は、うれしくもあるが、やりきれない気もする。それは江戸、京都、大阪の太夫をひとり残らず身請けしても、また芝居の興行主をして大損しても、自分一代では蔵の金をとうてい使いきれそうにないからなのである。なんとかして使い減らしたいのだが、そのためのよい思案も浮かばない。いったいこれはどうしたものであろうか。

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夏目漱石『それから』 2007.5.9

  

映画がつまんなかった漱石の『それから』。実は原作を読んでいませんでした。
『三四郎』『門』と三部作になっているという事もあり、これを機会に読んでみました。

んで、感想。う~~ん、今で言えばニートですよねえ。全く共感できず。(^^;)
寝ぼけた話~と読んでいて眠くなってしまいました。
以下引用。

 代助は決してのらくらしているとは思わない。ただ職業の為に汚されない内容の多い時間を有する、上等人種と自分を考えているだけである。

「何故働らかないって、そりゃ僕が悪いんじゃない。つまり世の中が悪いのだ。もっと、大袈裟に云うと、日本対西洋の関係が駄目だから働らかないのだ。

「働らくのも可いが、働らくなら、生活以上の働きでなくっちゃ名誉にならない。あらゆる神聖な労力は、みんなパンを離れている」


何を寝ぼけたことばかり・・・と思ってしまふのですが、母によれば、昔はこういう高等遊民というのが結構居て、めずらしい事ではなかったとか。
今もニートがごろごろ居て、めずらしい事ではありませんが。

納得いかないのは、親や兄から金を毎月貰っているのだから、それなら親や兄の言う通りにするべきなんじゃないか、と言う事です。金だけ貰っていながら、何好き勝手やってるんだよ、と。
そして、親や兄の奴隷でしかないのが、パンの為に働く人達よりも上に位置する高等な人種なんですかあ? と思うのですが。
世の中のせいにする辺りなども、とっっても今風な気がしました。(こーゆーの大嫌い) その点、漱石文学というのは、決して昔の話にとどまらない、現代に通用する話であるのはスゴイと思います。

この小説は良いとは思いませんでしたが、漱石は好きなんです。
なので、ああ、同じだ~と思える箇所を見つけると、ちと嬉しくなったりします。↓

実を云うと、自分は昨夕寝つかれないで大変難儀したのである。例に依って、枕の傍へ置いた袂時計が、大変大きな音を出す。それが気になったので、手を延ばして、時計を枕の下へ押し込んだ。けれども音は依然として頭の中へ響いて来る。

私、壁に掛かっている時計をはずして、押入れの中に押し込んだ事があります。
あるある~と思った箇所。↓

代助はそれでも辛抱して、約二時間程眼を頁の上に曝していた。が仕舞にとうとう耐え切れなくなった。彼の読んでいるものは、活字の集合として、ある意味を以て、彼の頭に映ずるには違ないが、彼の肉や地に廻る気色は一向見えなかった。

ここにチラリと書きましたが、映画では着物がとっっても素敵でした。小説にも着物の事が結構出てくるのは嬉しいです。以下引用。

 三千代は玄関から、門野に連れられて、廊下伝いに這入って来た。銘仙の紺絣に、唐草模様の一重帯を締めて、この前とはまるで違った服装をしているので、一目見た代助には、新らしい感じがした。

銘仙の紺絣に唐草模様の帯!!唐草模様に弱いですっっ。

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井原西鶴『好色一代女』其の六 2007.5.7

*ラストのネタバレあり

溝口健二の『西鶴一代女』については、後に感想をUPしたいと思ってますが、最初と最後に出てくる五百羅漢の所は、まるで違うので、原作では実に良いシーンなだけに、ちと残念でありました。
溝口の一代女は、1人の男を思いつづける、精神的には貞淑な女だと思います。
なので当然のごとく、五百羅漢の1人が最初に身分違いで思いを遂げられなかった男の顔に見える訳です。
原作の方では、五百羅漢が次々と今迄関わってきた男の顔に見え、壮観という感じがします。実に素晴らしいです。

元々は良家の娘だった一代女のすさまじい転落ぶりは、見事とも言えるものであり、そんな中、したたかに必死に生きてきた彼女の最後のセリフが、ほんっっとにカッコ良くてしびれました。

殊勝にも念佛三昧に、その日その日を送つてゐたのに、めづらしい人の訪れに心惹かれて、思はず酒に心が乱れ、短いわが世の長物語をついうかうかと喋ってしまつた。しかしこれもまた、わが身の罪の懺悔だと思へば、かへつて心の曇りも晴れた。一代女と人に知られて何を秘すべきことがあらう。如何に淪落の身となつてもまだ心までは濁らなかつた。

集英社の『富岡多恵子の好色五人女』の <解説> に書かれている、以下の言葉には同感です。

もとより彼の好色本は、ただ単に男女の色事を興味本位に書いたものではない。そこに人間の赤裸々な真実の姿がある。浮世草子作家に徹した西鶴は、現実を鋭く見つめ、そこにある人間のあるがままの姿を、冷静に客観的に描いていく。


   

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井原西鶴『好色一代女』其の五 2007.5.5

*引き続き18禁で

近頃の文学の性描写というのは、どうも色気に欠ける気がしてしまいます。
おそらく、過去には日本人に備わっていた奥ゆかしさというものの欠如、隠す事なくそのまま「もろ」な表現によるものではないかと思うのですが、前回の「埒をあける」の箇所もそうですが、西鶴の性描写のなんと色っぽいこと!
以下の文など、見事です。

男は隣近所に遠慮もなく、する事が次第に荒つぽくなれば、女も眞實泣聲になるとともに自然と枕を外してしまひ、まさしく挿櫛の折れた音が聴こえる。
 そのうち二階の床では、もうこれ迄と言つて、鼻紙の音。つづいて隣の床では、よく寝入つてゐる男を揺り起して、
「もう夜が明けます。お名残り惜しい」
と言ふと、男はまだ夢現で、
「堪忍してくれ。もうひとつもならぬ」
と言ふのを酒かと訊けばさうでもなく、下帯を解く音が聴こえた。


ちなみに旧い方では、こふなつてます。

男は屏風まくらにえんりよもなく所作次第にあらくなれば、女もまことなる泣聲おのづと枕をとつて捨て、乱れて正しく指櫛のをれたる音、二階の床には「あゞ是迄」といふて鼻紙の音、隣の床には心よく寝入りたる男をこそぐりおこし、「やがて明くる夜の名残もをしき」などいへば、男は現 (うつつ) に「ゆるしたまへ。もはひとつもならぬ」といふを酒かときけば、下帯とく音おもひの他なる好め、

櫛の折れる音、下帯を解く音等の表現のなんと素敵なことよ!芸術的ですらあると思いますっ!
次回で終わります。


   

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井原西鶴『好色一代女』其の四 2007.5.3

*18禁でお願いします

◆埒をあける◆

「埒をあける」という言葉を、澁澤龍彦が『悪徳の栄え』の訳で、性的な意味で使っているのですが (こちら) 、これを読んでいた当時、mixiの澁澤コミュで話題にした所、この言葉を性的な意味で使ったのは澁澤先生のセンスによるのではないか、という話に達した訳ですが、ぬわんとっっ、この井原西鶴の『好色一代女』で、まさに同じ意味で使われているのがわかりました!!
これは自分にとって、実に嬉しいおもしろい発見でした。以下、例によって古い新訳より。

耳をつかまへて引き寄せ、腰の痛むほど撫で擦って、もやもや仕懸けたけれどさりとは情なく、どうしても埒が明かなかつた。
 かうなると何だか残り惜しく、まだ日が高いからと言って聞かして、股の間に手を差し込んだところ、急にむくむくと起き上がつたので、首尾かと思つて待ちかねてゐると、爺はもう諦めたのか、


ところが、富岡多恵子の新訳では、この言葉が使われていないのが、ちと残念でありました。↓

親仁の耳を引きよせ、腰の骨が痛くなるほど愛撫して、興奮させるべく工夫いたしましたけれども、いっこうに効き目がありません。

ちなみに、いちばん古いのは、こうでした。

耳とらへて引きよせ、腰の骨のいたむ程なでさすりて、もやもや仕掛けぬけれどもさりとは不埒、

他にも
うれしく御枕をかはせしその甲斐もなく、いまだ御年も若うして地黄丸の御せんさく、ひとつも埒の明かざる事のみ、此の上ながらの不仕合せ、

いやな男には顔振ってひとつの埒あけさすまでは、天井の縁をかぞへて、外なる事に心をなして、うき世に濁りて水の流るるごとく身を持ち、

などなど、ちょくちょく出てきました。
色っぽい話題、つづきます。


   

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井原西鶴『好色一代女』其の三 2007.5.1

原作の一代女が、なかなかしたたかで悪どい面があった所は、溝口映画の一代女と全く違っておもしろいです。以下古い新訳より引用です。旧字は新字に置き換えてます。

そんな老人ならば、此方の出様でどうにでもなる。縁があつて世話になつたら隙間を見て他に男を拵へ、もし子供でも出来た時は、その老人の子といふ事にして、御隠居の跡は自分の物になるやうに書き残させ、先々を安楽に送らうと考へ、思案を定めて往くうちに、

よく寅さんが、女に関してはなんっにも贅沢は言わない、と前置きしながら、ずらずらと条件を並べるのに爆笑でしたが、これに出てくる殿様のように、ここまで細かいと、もう感心する他ないです。↓また古い新訳からです。

年は十五から十八位まで、當西風の顔で少し圓く、色は櫻の花よりも薄い位、顔の道具は四つとも不足なく揃つて、目はあんまり細くなく、眉は濃く口は小さく、歯は皓く、耳は長みがあつて縁が浅く、少し離れて根もとまで見え、鼻はおつとりとしてだんだん高くなつてゐるのが好く、わざとらしくなく自然に生え止まつた額つき、首筋の延びたすつきりとした襟脚、後れ毛のない後ろ髪、しなやかで長く爪の薄い手の指、また足は八文三分に限つて裏が透いて見える位親指が反り、銅は普通の人よりも長く、腰が締まつてゐてあんまり肥ってゐない肉付、大きな尻付をしてゐながら衣裳付きが好く、姿に品があつて、温和しい性質、その上女に定つた諸藝に優れてゐて萬事を心得、體に黒子がひとつもないのが望みといふ好尚である。

まだ続きます。


   

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ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
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