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『失われた時を求めて7 第四篇 ソドムとゴモラI』その5 2008.10.29

巻末の三木卓さんのエッセイ「過激にして明晰」は、これがまた、あまりにひどいネタバレオンパレードでした。
ハードカバーで読んだ1回目の読書も、かなりネタバレされてガッカリでしたが、何故なんでしょう。
全体をわかった上で楽しむタイプの小説にしたって、これはなあ・・・とゆー感じ。
三木卓さんのせいではなく、たまたま7巻にこれが入ったっつー事なのかもしれませんが、もうちょっと読者の今後の楽しみを奪わない努力を出版社にしてほしいです。
とは言え、光文社古典新訳文庫より、集英社文庫ヘリテージシリーズの方が格段に良い気はしますね。ま、こちらは旧訳を読んでいないので比べられないかもしれませんが、これの他、ダンテの『新曲』やジョイスの『ユリシーズ』なども読みましたが、少なくとも日本語に関しての違和感はありません。
このエッセイから、オデットに関しての引用です。ほんの軽いネタバレありです。まあ、このくらいなら問題ないかと。

 オデットが終章にいたって、老いさらばえた登場人物のなかで、一人時空を超越したかのごとくに美をほしいままにしている場面 (そのあと作者は意地悪をするけれども) は、女性という性の強さをみせつけられる思いがした。ぼくの少ない映画体験からオデット的な女性を探してみると、それは「天井桟敷の人々」(マルセル・カルネ監督) のギャランス (アルレッティ) である。

工エエェェ(´д`)ェェエエ工 ぜんっっぜん違うと思うんですけど。
オデットは実際人を愛したことがあるの?って気がしました。



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『失われた時を求めて7 第四篇 ソドムとゴモラI』その4 2008.10.26

世の中ドレーフュス派と反ドレーフュス派に分かれる訳ですが (小説上ね)、社交界の人々は、これに関して全く自分の意見を持たずに、状況によって有利な方に動いてる人が多いんです。
真相はどうなんだ、なんて考えてすらいない感じが。
こういう政治的な事だけでなく、趣味に関してもそうなんです。ワーグナーをけなしたり、ショパンは古いと言ったり、ろくでもない画家を賞讃したり。
両カンブルメール夫人の描き方などを読んでいると、最初に方に書いたと思いますが、やはり『源氏物語』を連想します。
いぢわるな人物描写と言い、小説の長さと言い。
あまりにも醜い風貌でありながら、モノホンの芸術の良さがわかる数少ない人物と描かれているカンブルメール老夫人に対し、すんごい俗物のくせして、何故か自分のセンスに自信があり、老夫人をバカにしきっているカンプルメール若夫人のいぢわるな描写が、面白かったです。
この若夫人タイプって、実は物凄く多いと思うんですよ。
実際、ぜんっっぜんわかってないのに、その人の言う事は一般に支持される、ってな事が世の中多いですし、それが世間にわかるまでに、実に多くの年月を要します。いつの時代もあるこの現象は、何故なんだろう、と思います。
なので、モノホンの良さがわかる数少ない人達は、孤独に陥るのですが、同士に出会った時の喜びは格別ですね。

って訳で、この小説を7巻まで読んでいる方も少ないとは思いますが、そんな数少ない同士のコメントを待ってます。(笑) そうぢゃない方も~~お初の方大歓迎。エロバカ迷惑コメントばっかし毎日つくんだもんねえ。ううっ、さびっす。

次回、巻末のエッセイに言及して、この巻終わりにしたいと思います。



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『失われた時を求めて7 第四篇 ソドムとゴモラI』その3 2008.10.24

まずは引用です。

ジルベルトの紙挟み、瑪瑙のビー玉、それらが以前にあんなに大切だったのは、当時の私の純粋に内面的な状態のせいだった。というのも、今やそれは私にとって、ごくありきたりの紙挟みやビー玉にすぎなかったからだ。

工エエェェ(´д`)ェェエエ工 だって、初恋の大切な思い出の品なんぢゃないの~~?
そういう気持ちって、男性の方が強いと思っていたのですが。1度愛した人の事は忘れられないみたいな…。
どうでもよい物になってしまうものなんでしょうか?
以前、2ちゃんねるのコメントで、うまい事言うなーと思って覚えているのがあります。
「女は上書き保存、男は名前をつけて保存」
この小説、男性の意見を聞いてみたいと思う所が多いんですが、コメントつきませんねぇ。
こんなにロマンティックな表現をする人がねえ・・・↓

一方そのあいだ海は、波が崩れるたびごとに静かに高まって、流出するその水晶で完全にメロディを覆ってしまい、メロディの楽節は互いに切れぎれになってあらわれた。ちょうどイタリアの大聖堂のてっぺんについている弦楽器 (リュート) を持ったあの天使たちが、青い斑岩と泡立つような碧玉の棟飾りのあいだに立ち上がっているように。

こういう所は流石に美しいです。
次回へつづきます。



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『失われた時を求めて7 第四篇 ソドムとゴモラI』その2 2008.10.22

「ロミオとジュリエット」に例えての愛の話はおもしろかったです。以下引用です。

このロミオとジュリエットは当然にも、自分たちの愛が一時の気紛れではなくて、互いの気質の調和が準備した文字通り予定された宿命であると考えることができようし、それも単に彼ら自身の気質だけでなく、二人の祖先たちの気質や、はるかに遠い遺伝によっても準備されてきたと考えることができよう。だからこそ、彼らに結びつく人間は、誕生以前から彼らのものになっているのであり、私たちの過ごした前世の世界を動かしている力にも匹敵するような力によって、彼らを惹きつけたのだ。

次の文も、不思議だけどある気がしゅる~~

ときとして未来は自分でも気がつかないうちに私たちの心に住んでいて、嘘をついているつもりの言葉が、来たるべき現実を描いていることもあるものだ。

次のも真理だ。

もっとも、伯父の方はいささかも猫をかぶっているわけではなく、新たな状況があらわれるたびに「べつな問題」だと思いこむ人間の能力によって、だまされているにすぎない。その能力のおかげで、人は芸術や、政治や、そのほかのことについて、さまざまな誤謬を採用してしまうのだが、しかし十年前にも同じものを真理と見なしていたことには気づきもしない。そのころは、別な絵画の流派をこきおろしたり、別な政治的事件を憎むに価すると考えたりしていたのだが、人はそこから脱け出して、同じものが装いを新たにしているとはつゆ知らずに、今ではこれを取り入れてしまう。

次回へつづきます。
『失われた時を求めて』今までの感想はこちらから。



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『失われた時を求めて7 第四篇 ソドムとゴモラI』その1 2008.10.19

この巻で、この小説のかなり大きいテーマである〈同性愛〉がくっきりしてきます。リアルな描写にドキドキ!
そんな中の印象的だった一文を。

苦痛と同じくらいに騒がしいものがあり、それは快楽である

私は、この本でドレーフュス事件のことを知ったのですが、プルースト自身がユダヤ人の血が入っていることもあるのでしょう。この小説において、この事件はかなり重要です。
スワンとブロックという対照的なユダヤ人、オデット、サン=ルーの恋人であるラシェル、社交界の人達の偏見などなど。
ユダヤ人だけに限らず、あらゆる差別問題について言及されています。以下引用です。

彼らは、医者が盲腸を探すように、歴史のなかにまで倒錯を探し求め、イスラエル人たちがイエスをユダヤ人だと言うように、ソクラテスも倒錯者の一人であることを指摘して喜ぶが、そのとき彼らが思いもしなかったのは、同性愛が常態であったときに異常者はいなかったことであり、キリスト以前に反キリスト者はいなかったことであり、汚辱のみが犯罪を作るということだ。

「異常者」というのは数が決めるという事実は、恐ろしいと思います。

次回へつづきます。



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『失われた時を求めて6 第三篇 ゲルマントの方?』その3 2008.10.17

1回目で書きましたが、覚悟がないせいなのか結構だるい箇所が多いんだな、と思ってしまった2度目の読書。
延々と続く社交界話、彼らを皮肉に描いている所は好きではあるのですが…。
アルベルチーヌとの再会も、ほんのちょびっとだったしなー。とにかくゲルマント公爵家での社交界話がメインです。
才気を効かせたゲルマント公爵夫人のセリフの滑稽さが、おそらく翻訳では伝わらないおもしろさもあるのではないか、と想像するのですが。駄洒落なんか、かなり無理矢理ですしね。きちんと訳注に説明はされています。
そんな退屈な読書を進めていましたが、シャルリュス男爵が出てきた途端にパーッと光がさしたようにおもしろいのなんのって!
この後の巻で明らかになるシャルリュス男爵の性癖を既に知っている私は、よくぞご無事で (語り手がね)、なんて思ってしまいました~。
いやはや、この巻のこの箇所は、プルースト、実に筆が冴えていると思います。

終盤では、またまた変貌したスワンが登場するし、身近な人の危篤よりも、楽しみにしていた舞踏会をなにがなんでも優先しようとするゲルマント公爵夫妻が、初読の際も実におもしろかったです。性格描写とセリフが見事!

巻末のエッセイは、四方田犬彦さんの「わが友ブロック」。ドストエフスキーについて言及があったので、それを引用して終わります。

ちなみにプルーストが興味深いのは、ドストエフスキーの影響を受けてサロンでの長々な会話を何十頁も書き続けるにもかかわらず、その内容が『悪霊』の作者のようにいっこうに神学と人間の実在の問題へと深まっていかないところにある。彼が描くのは、ただひたすら愚者のための愚者が語る、世俗の噂話なのだ。



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『失われた時を求めて6 第三篇 ゲルマントの方?』その2 2008.10.14

第二章冒頭の文章の、なんと美しいこと!って訳で引用です。

 その日はごく普通な秋の日曜日にすぎないのに、私はたったいま生まれかわったばかりで、人生はそっくりそのまま手つかずに私の前に横たわっていた。

それから、そのすぐ後の文ですが、あるある~~と思いつつ、ヴェートーベン第五交響曲『運命』を『ハ短調シンフォニー』と書くところが洒落てますよね。

以前に、風が暖炉の煙突のなかを吹きぬけていたときに、仕切り板を叩くその風の音が、『ハ短調シンフォニー』の冒頭の有名な弦の音にも似た抵抗できない不思議な運命の呼び声であるかのように思われて、私は感動しながらそれを聴いていたことがある。

日常生活のある音が、音楽に聴こえることってありますよね。
私は洗濯機のリズミカルな音は、音楽的だと思います。
そして、ゲルマント公爵家での会話に、オランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館、フェルメールの『デルフトの眺望』のことがチラッと出てくるのが嬉しいです。
この小説で話題にされている場所に、自分が行ったという事に、なんとも不思議な嬉しさを感じます。
ベルギー・オランダ旅行日記はこちらから~

次回、多分この巻最終回につづきます。
『失われた時を求めて』今までの感想はこちらから。



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『失われた時を求めて6 第三篇 ゲルマントの方?』その1 2008.10.12

1回目の読書時には、大変なのを覚悟していたせいか、意外にすらすら読めるじゃん!なんて思った記憶があるのですが、今回2度目の読書で、こんなにだるい読書だったけか・・・って事も思ってしまっている訳でして。
スワンの恋なんてのは、わりとすらすらと読める方なのですが、この巻の真ん中へんなどは、社交界話が延々とつづくので、ちと辛かったです。
メインとなるゲルマント夫妻の〈才気〉ですが、「はじめに」に書かれた文には、にゃるほど、でした。

ゲルマント公爵夫人の才気が、辛辣で、意表を突き、社交界の人々からやんやの拍手を浴びながら、あくまでも空しいのは、社交界そのものの空しさを示している。

ネタばれしますが・・・

最初は祖母の死で始まるこの巻。変貌していく祖母が痛々しく、印象的でした。そして口達者なだけのやぶ医者・・・。
この小説では、表面だけ才気を装い、中身のない薄っぺらな人たちを、実に皮肉に描いています。こういうところは好きですね。

あ、と思ったのが次の文。にゃるほど、そうなのかな、と。
戦争と野球を比べちゃいけないのかもしれませんが、贔屓チームに対する気持ちと共通点があるよーな。

戦争のとき、自分の国を愛していない者は、その悪口こそ言わないが、しかしもう敗けたと思って自国に哀れみを抱き、ものごとを暗く考えるものなのだ。

自分、この傾向ある気がします。野球見ていて劣勢だと「ああ、今日は負けだ」なんて、しょっちゅう口にしてるし・・・。
なにごとに対しても、大きいショックを受けるのが恐いから、予防線を張るんですよね。だから悪い方に考えてしまふ。希望なんて、なるべく持たないようにしなきゃ、なんて思ってしまいます。
しかし、そう思いつつも、持つまい持つまいと思っても、どこかでどうしても希望を持ってしまって、悲しい思いをするって事もある訳でして。
・・・と話が別の方向へ行ってしまいましたが、次回へつづきます。

『失われた時を求めて』今までの感想はこちらから。



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『失われた時を求めて5 第三篇 ゲルマントの方I』その5 2008.10.10

巻末の鈴村和成さんのエッセイ「ゲルマントという主題」では、あまりにヒドいネタバレがいっぱいでした。
再読と言っても結構忘れてる訳で、その忘れているのを幸いと思っているのに、これはあまりにもヒドイと思いますよ~訳者に関しても、かなりあちこちでネタバレされてるんですが。
ストーリーを知った上で楽しめる小説にしたって、やはり楽しみの一部を邪魔されたくありません。
そんな怒りの中、以下の文には、にゃるほど!でした。

 プルースト的恋愛では、恋の対象は交換可能な「身代わり」の関係にある。あるとき、ある人に、恋愛感情は結晶するが、そこには必然の機制ははたらいていなくて、その人でなくてもよかったのだ。すべての恋人が他の人の代役としてあらわれて来る。

納得。プルースト的恋愛の違和感はコレでしたか。
しかし、惚れられる方としては、えらい失礼と思いますよねぇ。
同じこのエッセイより、今自分が再読している意味を考えた以下の文で終わりにしたいと思います。

プルーストを読むタイミングというものがあり、それはくり返し人生のさまざまな機会を通じて、恩寵のようにおとずれる。



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『失われた時を求めて5 第三篇 ゲルマントの方I』その4 2008.10.8

昔むか~~しの話ですが、コクられた時に、こいつ私のどこを見てんの?ぜんっっぜんその言ってる事私に当てはまらないし~~ってな経験がありますが・・・(大昔の話ですよん。今ぢゃコクられることなんて・・・(号泣))、しかし・・・以下引用です。

これは複雑をきわめた社会のただなかに示される自然のすばらしい法則なのだが、人は愛するものについて何も知らずに生きているからだ。

ひょっとして、女に幻想を抱く男性の方に当てはまります?
ってな事を書きながら、この美輪さんの本を思い出しました。
私なんぞは、好きになると、その人のことを知りたいと思うんですが、知るチャンスすら与えてもらえないことも。・゚・(ノД`)・゚・
次は、実にタイムリーだったのですが、大道あやさんの絵を見て思ったことにリンクしました。

私たちはすぐれた音楽を、美しい絵を、そのほか数々の優美なものを味わいますが、そうしたものを作り出した人びとが、そのためにどんな代償を支払ったのかは、われわれの知るところではないのです。

あ゛~~、次のも真理だ。

ところが人生では、かならずしも美しい薔薇を届けた人がいつも一番親切にされるとはかぎらない。

多分、次回でこの巻最終回です。



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『失われた時を求めて5 第三篇 ゲルマントの方I』その3 2008.10.6

ロベールが、すっかり貢くんになっちゃってるのはスワンを連想させるし、その愛人は、やはりオデットを連想させられます。ああ、永劫回帰、とゆー感じ。
語り手の恋もそうだし、スワンがその基礎になってる気がします。
二十フランで手にはいる淫売婦を失いたくない為に、一年に十万フランもの金をみついでいるロベールという表記が、なんとも悲しくも可笑しいと思ってしまいました。
そのラシェルが「そんな女」で終わらないところが、深いと思いました。1人の人間を一面だけで捉えていません。

次の文は、身につまされるとゆーか何とゆーか・・・。

なんと多くの女性の生涯がこんなふうに、矛盾したいくつかの時期に分かれることだろう! 最晩年には、その前の時期にいとも陽気に捨てさったものを、必死になってもう一度つかまえようとする始末だ!

後になって分かることの、何と多いことか! (嘆)
次の文も、まさにその通りですね。

気どらない態度が人びとの心を奪うのは、気どることもできるということが知られている場合であり、つまりは金持の場合だからだ。

「施し」とか、そういうものとも置き換え可能かと。
いかにも善行をおこなってるぜな上から目線な態度は大嫌いです。
この辺で次回へつづきます。また「愛」の話なんぞを。



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『失われた時を求めて5 第三篇 ゲルマントの方I』その2 2008.10.4

話はサン=ルーの恋愛中心になっていきます。
サン=ルーの愛人が、小説上で、噂だけでなかなか姿を見せず、見せたときには・・・!という展開が見事。
スワンの時もそうだけど、なんで~?ってどうしても思ってしまうんですよね。とっとと別れたら良いのに~~とか。
周りから見たら、絶対もどかしいんですが、そんな恋愛の不思議さが、おもしろいのでしょう。
以下の文なんて、自分がやられた時を思い出すと辛い気が・・・。平気で彼女 (彼) を放置する人は読んでください!

 沈黙は力だ、と言われた。それとはまるで違う意味だが、だれかに愛されている者の手に用いられると、沈黙はおそろしい力になる。待つ身の不安をつのらせるのだ。ひとりの人から私たちを引き離すものほど、その人に近づきたいと思わせるものはない。それに、沈黙以上に越えられない障害がほかにあるだろうか? また、こうも言われた、沈黙は責め苦で、牢獄内で沈黙を強いられた者を発狂させることもあるくらいだ、と。けれども、愛するひとの沈黙に堪えるのは――自分がだまっている以上に――なんという責め苦であろうか!

ロベールもそうですが、どんどん不の思考に陥りますよね。
ロベールも自分も、こんな事されるような事何にもしてないのに~~なんて思ったり。

次の目にかわって想像力が周囲のものを眺めるわけにはいかないだろうという文。
これは、例えばラ・ベルマの演劇を見た時のことなどを思い出しますが、この小説の大きなテーマのひとつですね。
訳注を引用します。

これはプルーストの小説に含まれた本質的な問題の一つ。不在のものを見つめる想像力が美をとらえるのに対して、現実のものを知覚しても、美は生まれてこない。そこから、夢と幻滅の繰り返しが起こる。それをどうやって超えられるかが、この小説全体の課題でもある。

次回へつづきます。



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『失われた時を求めて5 第三篇 ゲルマントの方I』その1 2008.10.2

5巻は730ページもあり、しかも、実は結構だるかったです。
風景描写みたいなもので止まって、話がサクサク進まないと、どーもだるくなってしょうがなく、さらに、仕事が忙しくなって、あまり読めなくなってしまい、図書館の返却期日が気になってストレスに・・・。ううっ、よくない読書だなあ。
しかし、サン=ルーの愛人登場のあたりからは、おもしろくなってきます。

4巻の感想その4で書いた、プルーストの恋愛傾向と言うか、前回の読書でも、登場人物たちの恋には、かなり違和感がつきまとったのですが、次の文なんてのもねえ・・・。

 私は心底からゲルマント夫人を愛していた。私が神に願うことのできる最大の不幸は、彼女の上にいっさいの災難が襲いかかるようにしてもらうことだったろう。そして彼女が没落し、人びとの信用をなくし、私を彼女から引き離しているすべての特権を失い、もはや住むべき家も、挨拶してくれる人もなくなって、私に隠れ家を求めに来ることだったろう。

うわー、こわいっす。
次のは、あるある~~と思いました。

よく私は物音で目を覚ましたと思ったときに、反対に眠ったままでいることがあって、そんなときは一時間ものあいだ、眠りながら目が覚めている気になったからだ。

夢の中で何度も起きてんだけど、寝てる~ってこと、ありませんか?
これに続く文章が、なかなか素敵です。

私は薄い影法師になって、自分自身のために、眠りのスクリーンの上にさまざまな光景を演じる。そして眠りは、私がその場面にいあわせるのを妨げるが、私は自分がそこにいたような幻想を抱くのだった。

次回へつづきます。



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Author:吉乃黄櫻
ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
峰不二子、デボラ・ハリー、ウエンディー・O・ウィリアムスが憧れの人!

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