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鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』その6 2009.2.28

私、年をとることは悪い事ではない、自分は年をとる事に肯定的だ、と随分前から書いてきたと思うんですが、そして、あらゆる面で今でもその通りだと思うし、若い頃に戻りたいなんて思ったこともないんです。
それは、知識も増えて知恵もつき、人生経験も積んで若い頃より賢くなるから、という事なんですが、その反面、勿論体力の衰えだとか、お肌の調子だとか、しわだとか、い、いつの間に・・・ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン  
ってな事もいっぱいあって 物覚えの悪さとかも・・・ 、それは人間生きていれば、誰もが通る事であって、全く当たり前な事なので、逆らわずに自然に受け入れよう。

ってな事を思っていたハズなのに・・・、いざ実年齢言ってもビックリされなくなってみるとですねえ。以前はビックリされるから年齢言うのやだなー、なんて思っていたハズなのにですねえ。
ああ、このおでこのしわさえなければ、とか、全く興味なかったアンチエイジングなんてのもやらないと、とか、やっぱし思ってしまう訳でして。
「信じられんくらい若く見える」「化け物としか思えん (イザベル・アジャーニなんてそうだよね)」「年齢不詳」
ってなのに憧れる人って、物凄く多い気がするんで、以下の文は目から鱗な感じでした。

鈴木 「早く大人になりたい」とか、「早く老人になりたい」とか、「早く○○翁と呼ばれたい」という人は、昔はいたんでしょうけど、今はあんまりいない。みんな、ぎりぎりまで若さを維持したいという人ばかりですね。
川本 そうですね。「一生現役」とか、そういうこと言う人多いですね。
鈴木 昔の人なんかは結構三〇代ぐらいで○○翁とか言われたとか。でも今じゃ、四〇代でも若者じゃないですか。
川本 ええ。
鈴木 昔は、落ち着いた老人というか、手本になる老人がいたからそうなりたいと思ったんでしょうね。でも今はその手本がない。永井荷風のように、亡くなった人にしか見いだせない。


「ぎりぎりまで若さを維持したいという人ばかり」って、ほんっっとその通りだと思いました。



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テーマ : エッセイ/随筆
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鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』その5 2009.2.25

にゃるほどと思った2箇所の引用から行きますね。

鈴木 アラブのテロは、日本のカミカゼに習ったんです。それ以前はないですからね、爆弾を抱いて突入するなんて。

にゃるほど、そっか!と思いました。
次の文、右翼や極端な左翼のことは良く知らんのですが、にゃるほど納得、そんな感じする~~と思いました。

川本 喜怒哀楽っていう言葉がありますね。これは、やっぱり人間の四つの感情なんですけど、右翼も、左翼の極端な人たちも、喜怒哀楽の中で持っているのは、おそらく怒りと悲しみですよね。
鈴木 ほう。
川本 楽しみとか、喜びがない。だから息が詰まっちゃうんですね。まあ、それはユーモアがないということにも通じるんですけど。ユーモアとか笑いというのは、人間がどんなに追い詰められた場面でも、何とか行きようとする力になるエネルギーでしょう。ところが、怒りとか悲しみというのは、それをむしろ死のほうに引きずり寄せていく感情ですよね。極右も極左も、その点では似ていると思いますね。


「ユーモア」ってのは、日本人は比較的軽視しているように感じるんですが、すっっっごく大事なことだと思っています。
多分次回最終回です。



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鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』その4 2009.2.23

私、時々書いてますが、実は家ではあまり本を読みません。
電車の中や、会社で読んでるので、本の為に新たに時間をつくる、ということは、あまりなかったりします。
電車で読む派ですが、読むために電車に乗るっつー事はした事がないのですが、川本さんの本の読み方が、実に楽しいので、引用です。

鈴木 僕は国営喫茶をつくるべきだと思います。日本の文化伝統のために。なかなか自分の家で本を読むってできない人が多いでしょう。本読みますか、自分の家で。
川本 自分の家で読む本というのは、仕事と関係ない、古本屋で買ってきた昭和初期の小説とか、現代と関係ないものを読むことが多いですね。それこそ鈴木さんの本を読むときは、電車に乗るんです。京王線に乗って、昼間だから座れるから、高尾とか橋本まで行って戻ってくることもあるし、高尾まで行ったら、その先中央本線のローカル線に乗って、大月のほうまで行くんです。そうすると、鉄道の旅を楽しみながら、本が読めるじゃないですか。新書だったら、往復で読める。現代を語った本は、そのほうが頭に入るんですね。家の中では、永井荷風とか井伏鱒二を読んでいるほうが楽しい。たまに仕事で北海道に行くときでも、飛行機では行かないんです。つまらないから。最近は夜行の本数が少なくなったから難しいけれど、行きは夜行に乗るんです。


よく高尾まで電車の旅してる友達がいますが、もっぱら夢の中です。(笑) 朝まで飲んで電車で寝落ち。

次回、にゃるほどと思ったのを2箇所ほど引用して、字数制限にひっかからなければ最終回です。
・・・のつもりでしたが、もう1箇所付箋貼り忘れたけど、書きたい箇所を思い出したので、多分残り2回になりますです。



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鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』その3 2009.2.20

◆ソクーロフ『太陽』◆
映画の感想こちらにUPしてますが、今自分の日記を読み返し、川本さんが同じ感想を持たれたのを知り、嬉しくなりました。以下引用です。

川本 イッセー尾形は素晴らしかった! かわいい天皇でした。ああいう天皇を描いたのは初めてじゃないでしょうか。子供みたいな天皇ですよね。

天皇を子供のようにかわいく描いた事で、実際右翼の人達は「天皇陛下を馬鹿にしてる!」と批判していたそうですが、鈴木さんは、右翼が映画館に行ってスクリーンを切るんじゃないかと心配されたそうですが、それはなかったんですね。
何故かというと、あの映画は「切り」づらいんだとか。
天皇が映っているからなんです。にゃるほど~~とこの辺も大変おもしろく読みました。
それと、ソクーロフが『太陽』をつくる前に、鈴木さんは助言を求められてたんです。以下引用です。

鈴木 いや、全く。ただ二点だけ異議を言わせてもらったのは、最初は「ヒロヒト」というタイトルでやると言っていたこと。もうひとつは全員ロシア人でやるということ。右翼の代弁をするわけじゃないけれど、それはかえって、ソクーロフさんの意図を誤解されますと言いました。日本人には天皇を「ヒロヒト」と呼ぶ習慣はないし、それだけで皆反発したり、観なかったりするかもしれない。だから「天皇」でもいいし、「エンペラー」でもいい。とにかくタイトルは変えたほうがいいんじゃないかと言った。そして、やはり俳優は日本人がいいんじゃないかと言いました。でも、ロシアには日本人とそっくりな顔の人がいっぱいいるんだという。実際に、ヒトラーを題材にした『モレク神』(99年) もロシア人でやったし、レーニンを描いた『牡牛座』(01年) もロシア人でやったと。あとで聞いたら、レーニンとヒトラーは同じ役者がやったんですね。その役者を今度、天皇にするという計画だった……。

次回につづきます。



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鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』その2 2009.2.19

◆戦争映画◆
にゃるほど、そうか!と思った一文を。

鈴木 ある評論家が「戦争映画にはすべてがある」と言っていた。友情もあるし、愛もある。戦いも裏切りもある。すべてを凝縮しているから「戦争映画はなくならない」と。なるほどなと思いました。日常生活でそういう殺したり、殺されたりっていう極限状況はないでしょう。

『靖国 YASUKUNI』とソクーロフの『太陽』についての所は、ひじょーに興味深かったです。
・・・とこう書いていくと、結構映画の話してましたね。(汗汗)
どこまで引用していいんだろか、と迷いますが、とにかく引用行きます。

鈴木 先日、『靖国 YASUKUNI』(監督・李イン) に対して、自民党の国会議員が事前に観せろと言ってきた問題がありました。
川本 鈴木さん、あの映画のチラシに推薦文をお書きになっていましたね。
鈴木 それでみんな、僕のところに抗議が来ている。「何でこんな反日映画の推薦しているんだ、ばかやろう」って叱られているんですよ。でも、その人たちは実は映画を観ていないんです。週刊誌で反日映画だと書いてあるので初めて知る。反日映画に文化庁が七五〇万円も金を出しているのはおかしいじゃないかと報道されているので知る。
 国会議員はさらに「われわれに観せろ」。配給側は、じゃあ試写会で観てくれと返答したら、試写会へ行く時間がないから、われわれだけに観せろ。「自分たちは国政調査権がある」なんて言っている人がいたんです。じゃあ全国会議員を対象に試写会をやるから、というかたちを取ったんです。
川本 それで、反応はどうだったんですか。
鈴木 いろいろ批判しています。思い上がりですよ。だって、公開されて一般の人が観て、その上で国会議員も「これはけしからん」と言うならまだわかりますが。
川本 誰かが具体的に被害を受けた事でもないのに、なんで調査なんて……。
鈴木 思い上がりがあるのでしょう、自分たちが観て批判してやると。それで、国民に観せていいかどうかわれわれが判断すると。何か勘違いしている。


いやー拍手!まったく同感であります。
長くなりましたので、ソクーロフの『太陽』については次回です。



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鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』その1 2009.2.18

本と映画と「70年」を語ろう

鈴木邦男さん・川本三郎さんの対談本です。
川本三郎さんには『今日も映画日和』で随分楽しませていただきましたし、期待が膨らんだのですが、う~~ん、おもしろかったのだけど・・・このタイトルには不満です。
本と映画の話ってほんっっっのちょびっとじゃないですか?
ほとんどは、右翼、左翼、革命の話ですよね。
なので、「本」と「映画」に期待してしまうと、ガッカリすると思うんですけど。
・・・と、その辺期待して読んだので、工エエェェ(´д`)ェェエエ工 という感じではありましたが、コレはコレで、おもしろかったし、勉強になりました。にゃるほろ~~オモた点も多かったし。
ってな訳で、またまた引用しちゃいます。

◆ドストエフスキー◆
いやはや、何の本読んでてもドストエフスキーには言及されてるなあ、とゆー気がします。
以下引用です。

鈴木 見沢君は顔色も変えずに人殺しをするし、終わった後はハンバーガーをむしゃむしゃと食べる。人間離れしているというか、そういうしたたかさがありましたね。
川本 ドストエフスキーの『悪霊』の世界ですね。


ここで言及されているのが、『悪霊』の脇役ピョートルですが、これが私、とっっても好きなキャラなんです。
スタヴローギンが好きな方多いっすけどね。むしろピョートル嫌いな人の方が多そうですが、この人こそ大物ぢゃないかと。物凄い悪役っぷりです。
『悪霊』も再読したいなあ。
ドストエフスキー読書感想はこちらから。(『悪霊』は書いてませんが)



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『失われた時を求めて13 第七篇 見出された時? 』その4 2009.2.17

この作品を再読して、いちばん良かったと思うのは、最初の方の感想で書いたと思いますが、読みながら自分自身の事を考えた事だと思います。
以下引用です。

おそらくその本を読む人びとのことを思って、それを私の読者と言うのは、不正確でさえあるだろう。なぜなら私の考えでは、彼らは私の読者ではなくて、自分自身のことを読む読者だからだ。私の本は、コンブレーの眼鏡屋がお客に差し出すような、一種の拡大鏡にすぎないのである。私の本、それによって私は彼らに、自分自身のことを読む手段を提供するだろう。したがって私は彼らに、私のことを誉めたり、けなしたりしてくれとは求めないだろう。ただ、本当にこの通りかどうか、彼らが自分自身の内部で読んでいる言葉は、まさしく私の書いた言葉かどうか、それを言ってくれということだけを求めるだろう (この点で意見の分かれることもあるだろうが、それはかならずしも私の思い違いから起こるとは限らず、ときには読者の目が、私の本の適しているような目ではなく、彼が自分自身をよく読むことができないということから起こる場合もあるのだ)。

そして「あとがき」から引用して終わります。

『見出された時』のなかで語り手は何度も、読者は「私の読者」ではない、自分自身のことを読む読者だ、という趣旨のことを述べているが、それこそ作者プルーストが想定する『失われた時を求めて』の読者の姿でもある。つまりプルーストの小説はもともと、自分自身を振り返るすべての読者に開かれているはずのものだった。そうだとすれば、これをただ専門家のみが接近を許された聖域にまつりあげるのではなく、もう少し身近なものにすることはできないか。それが私の意図したことだった。



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『失われた時を求めて13 第七篇 見出された時? 』その3 2009.2.16

「偽善的博愛主義」に嫌気のさす自分としちゃあ、次の文は言えてるなあ、と思えるものでした。引用です。

私が図書室のなかで感じたもの、私が大事に守ろうとしたものは、これもやはり快楽だったが、しかしそれはもはや利己的な快楽ではなかった。むしろ、少なくとも他人が利用できるような利己主義を備えた快楽だった (なぜなら、すべて自然界の実りゆたかな愛他主義は利己的なやり方で発展するもので、利己的でない人間の愛他主義は不毛だからだ――たとえば、不幸な友人を家に迎えたり、公けの役職を引き受けたり、宣伝の文章を書いたりするために、本来の仕事を中断する作家の愛他主義がそうだ)。

うーーん、むずかしい。ちと私が書いた事とは意味が違うかも? (自分の理解力に自信ナシ)
今回短めですが、次回最終回につづきます。



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『失われた時を求めて13 第七篇 見出された時? 』その2 2009.2.13

はじめに「はじめに」から引用します。

 この大作は、最後に「完」という文字が記されているにもかかわらず、全体にさまざまな未完成の部分を残している。とくに本全訳第九巻の『囚われの女』から始まる死後出版の部分には、数多くの矛盾した文章が認められる。その主なものはその都度指摘しておいたが、もし生きていたら作者がこれを修正したであろうことは確実である。しかしまた〈時〉を引きずる人間を描ききろうとすれば作品はかならずや未完に終わらざるを得ない。それはこのような壮大な意図のはらむ宿命である。プルーストがそれをよく承知していたことは、本巻二四八ページにも明瞭に見てとれる。だから彼が残したさまざまな矛盾する記述は、どんなに書き急いでも完成するはずのない大作に挑んだ証しとこそ見なすべきなのであろう。

その248ページも引用しておきましょう。

そしてこのような偉大な書物のなかには、草案しか作る余裕のなかった部分が残るだろうし、そうした部分は、建築家の壮大なプランそのもののために、おそらく永久に完成されることがないだろう。

プルーストのいいかげんさについてはこちらに書きましたが、「はじめに」に書かれている事もわかるんですが、それにしてもあまりにも・・・って感じなんすよ。
正直言って「世界の名作」とするには、ちょっとなあ・・・という感想は、初読の際にも思ったことです。
だからこういう企画の時にも、この作品はまず上げないっすね。
あの企画以後に読んだ小説では、長編では、『チボー家の人々』『源氏物語』は、間違いなく世界の名作に入るでしょう。

次回ヘつづきます。



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『失われた時を求めて13 第七篇 見出された時? 』その1 2009.2.12

 

遂に全巻再読完了しました。
いやーしかし、ほんと、ああ、読むのダルイ・・・ってな事が正直多い読書でして。(^^;)
再読ですし、別に途中でやめてもかまわないのはわかってますし、どこから読んでも良い小説でもあるんです。
「あとがき」から引用しますね。

 プルーストは、とかく細部の微妙な描写や考察が特徴と見なされやすい。彼の小説はどこを開くも自由であり、読者はどの断章でも、自分の気に入ったところを読めばよい、といったことがしばしば語られたのはそのためだ。

一旦中断です。
なので、今回は例のフェルメールの所とか「スワンの恋」ぐらい読めば良かったのかもしれないのですが、どーも変に几帳面だったり、変に忍耐強い所のある性格なようでして。
本でも映画でも、つまらんなあ、どうしよっかなあ、やめようかなあ、と思いつつ、でも我慢して見てれば (読んでれば) これからおもしろくなるのかも、最後には得るものがあったりするのかも…ってな事を思って、よほどの事がなければ、我慢しちゃう所があります。
昔はもっと飽きっぽかった気もするんですが、いろいろ読んだり見たりしてるうちに、こうなった気もします。
しかし、上の引用の続き↓を読みますと、やはり最初から全部読んだのは、正しかったのかもしれない、と思います。

しかしプルースト自身は、この作品には「ヴェールで隠されているが厳密な構成がある」と言い、それは大きく開かれたコンパスの両脚のように隔てられているので、識別は容易でないかもしれない、と断っている (「フローベールの『文体』について」)。またこの最終巻で語り手が、自分は顕微鏡で真理を発見したのではなく、むしろ望遠鏡を用いて物を知覚したのだ、という趣旨のことを述べているのも、このことに通じるだろう。

次回へつづきます。



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『失われた時を求めて12 第七篇 見出された時I 』その6 2009.2.9

ブリューゲルに多大な影響を与えた、大好きな画家ボッシュ。
ずっと私「ボッシュ」と思ってきたのですが、ある時「ボス」表記になっていてとまどいました。
途中でこういう風に表記が変わる事って、結構ありますよね。慣れ親しんできた名前だから、実にとまどっちゃって、直しがたいのですが、変更された名前の方が正しい発音に近いのかもしれません。
って訳で、訳注より引用です。

Boschという綴りの名前は、ドイツ人なら「ボッシュ」、オランダ人なら「ボス」と発音する。直ちに思い浮かべられるのは、ピーテル・ブリューゲル (父) (一五二五頃―六九) に影響を与えたネーデルラントの画家ヒロエニムス・ボス (一四五〇頃―一五一六) で、彼は奇怪な動物や人間を描いた幻想的な画風で知られる。また、ファン・デン・ボスはフランドルの画家の名前でもある (一六七五/八一―一七一五)。

ちなみに、綴りは違うけど、ボッシュ (Boche) は侮蔑的にドイツ人を指す言葉です。



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『失われた時を求めて12 第七篇 見出された時I 』その5 2009.2.6

またまた本について引用です。

一人ひとりの読者は本を読んでいるときに、自分自身の読者なのだ。作品は、この書物がなければ見えなかった読者自身の内部のものをはっきりと識別させるために、作家が読者に提供する一種の光学器械にすぎない。書物の語ることを読者が自分自身の内部に認めるのは、その書物の真実性の証明だが、少なくともある程度まではその逆も成り立つ。というのも、作者と読者の二つのテクストのあいだに食い違いが生ずるのは、しばしば作者ではなくて、読者のせいだからだ。そのうえ、単純な読者にとっては、書物があまりに難解であまりに曖昧すぎる場合もあるだろうし、こうして、書物が曇ったレンズしか差し出してくれないように、これでは本が読めないということも起こりうるだろう。だがこれとは違った特殊性 (たとえば倒錯) の場合には、読者が正確に理解するために、ある種の読み方が必要になることもある。作者はそれに腹を立てることなく、逆にこう言って読者に最大の自由を残しておかねばならない、「自分で見てごらん。このレンズの方がよく見えるだろうか。それともこちらのレンズかな。あちらのかな」と。

次回、訳注より、ちょっとした豆知識を。次回でこの巻の感想最終回です。



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『失われた時を求めて12 第七篇 見出された時I 』その4 2009.2.5

どこまで引用したらいいのか迷うところでありますが、「文学」についてです。

 真の生、ついに見出され明らかにされた生、したがって十全に生きられた唯一の生、これこそが文学である。この生はある意味で、芸術家と同じくすべての人のなかで各瞬間ごとに宿っている。しかし人びとはこれを明らかにしようとはしないので、目に入らないのだ。こうして人びとの過去には無数の陰画があふれているが、知性が「現像」しないので、陰画は役に立たないまま残される。それは私たちの生だ。そしてまた他人の生でもある。なぜなら作家にとっての文体は画家にとっての色彩と同じで、技術ではなく視覚の問題だからだ。文体は、この世界が私たちの前にあらわれる仕方の質的な違いを明らかにするもので、直接の意識的な方法ではそれは不可能であり、もしも芸術がなかったとしたら、その違いは各人にとって永遠の秘密になるところだろう。芸術によってのみ、私たちは自分自身からぬけ出して、ひとりの他人がこの宇宙をどんなふうに見ているかを知ることができる。それは私たちの宇宙と同じではなく、その風景は月世界のそれのように私たちには知られずに終わるところだった。芸術のおかげで私たちは、たった一つの自分の世界だけを見るかわりに、多数の世界を見ることができる。そしてわたしたちは、独創的な芸術家の数だけの世界を自由にするのであり、それらの世界は、無限の空間を回転するさまざまな星の世界以上に、互いに異なっている。そこから発する特別な光は、その光源がレンブラントと呼ばれようと、フェルメールと呼ばれようと、光源が消えてから何世紀もたっているのに、今なお私たちのところへ送られつづけているのである。

この先も良いんですが…文庫本12巻、424ページです。
次回も本の話です。



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『失われた時を求めて12 第七篇 見出された時I 』その3 2009.2.4

図書室でジョルジュ・サンドの『フランソワ・ル・シャンピ』と再会するシーンは、おおっ!と思いました。なかなか感動的なシーンかも。
ちなみにこの本、以前読んで感想UPしています。
ジョルジュ・サンド『棄子のフランソワ』
以下、引用です。

 その上、私たちがある時期に目にした物、読んだ本は、そのとき周囲にあったものにのみ永久に結びついているわけではない。それはまた、当時の私たち自身にも忠実に結びついている。それをふたたび感じたり考えたりできるのは、当時の私たちの感受性、思考、人格のみだ。私が図書室で『フランソワ・ル・シャンピ』を手にとると、ただちに私のなかには一人の少年が立ち上がって、私にとってかわる。この少年のみが、『フランソワ・ル・シャンピ』というタイトルを読む資格を持っている。彼は当時これを読んだように、そのときの庭の天気にかんするそっくり同じ印象、さまざまな地方や人生について作りあげた同じ夢、翌日についての同じ不安を抱きながら、この本を読む。私が別な時期に属する何かをふたたび目に浮かべると、今度は一人の青年が立ち上がるだろう。そして今日の私という人間は、打ち捨てられた石切場にすぎず、自分のなかにあるいっさいが似通った単調なものばかりだと思いこんでいるのだが、しかし一つひとつの思い出は天才的な彫刻家のように、そこから無数の彫像を引き出してくる。

それにしても、隠されたテーマ (近親相●) はこんなにも大きなものだったのか!と思いました。
ちと長くなりました。次回も「本」についての引用です。



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『失われた時を求めて12 第七篇 見出された時I 』その2 2009.2.2

こんなに出てきたんだっけ?ってなくらい、ドストエフスキーの名前がよく出てくる小説だったんですね。
って訳で引用です。

シャルリュスはイギリスに対して、またそのイギリスが参戦したときの立派な態度に対して、讃嘆の気持をいだいていたが、にもかかわらずこの非のうちどころのないイギリス、嘘がつけず、ドイツに小麦や牛乳の入るのを妨げているイギリスが、いくぶんかは名誉を重んじる人の国であり、名だたる介添人、決闘の審判者の国でもあるのに対して、ドストエフスキーの何人かの登場人物のような欠陥のあるならず者の方が、これよりすぐれている場合のあることを彼は承知していた。

もうひとつ。

ラスプーチン暗殺のときも同様だった。もともと人びとがこの暗殺に驚いたのは、ドストエフスキーばりの夜食にロシヤ的色彩が鮮やかに刻印されているのを見たからだ。

次は、ちょっとイイなと思った文を。

詩人たちはより純粋な空気で楽園を満たそうと空しい努力を払ったが、すでに一度呼吸された空気でなければ、すべてを一新するあの深い感覚を与えることはできないだろう。というのも、本当の楽園とは失われた楽園にほかならないからだ。

次回へつづきます。



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『失われた時を求めて12 第七篇 見出された時I 』その1 2009.2.1

 

この小説で、やはりいちばんおもしろいのがシャルリュス男爵でして、この巻スゴイシーンが出てくるですよ!ま、SMシーンなんですが。
そんな訳で、比較的楽しめた巻でした。
それにしても、この語り手、何故こうも、おもろいシーンを目撃してしまふのかしらん。(ま、そりゃ小説だから…)
なんだかんだ言っても、この小説の隠されてないテーマも隠されたテーマも、タブーな恋愛、一般的な目で見たらアブノーマルな恋愛ではないかと思います。同性愛も近親相● (←「わいせつな文字が含まれてます」とか出ちまったから伏せ字) も自分には全くわからんです。
マドレーヌの味から過去が甦る事ばかりが言われてる気がするんですが、そんなにキレイな小説じゃないんです。

語り手の傲慢さが気に入らんみたいな事は、繰り返し書いてますが、周りの人間を、自分にとって役に立つか、利用出来るか、という視点でしか見ていない気が、どうしてもしてしまいます。以下引用です。

私は自分に言いきかせる、もし彼女が死ぬか、または私がもう彼女を愛さなくなったら、私を彼女に近づけることもできたすべての者が、私の目に価値を失うだろう、と。

ま、「言いきかせる」だから、実際は違うのかわからんですが、今まで読んできて、サン=ルーに対しても、やはりそうとしか思えない訳でして。こういう人との関わり方が、とにかく嫌です。
人を利用する道具としか見ていなくて、用がなくなったらポイッって言うんぢゃねぇ。

次はまたまたドストエフスキーが出てきます。次回引用します~



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Author:吉乃黄櫻
ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
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