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澁澤龍彦『スクリーンの夢魔』その5 ◆『昼顔』あるいは黒眼鏡の効用について◆

◆『昼顔』あるいは黒眼鏡の効用について◆
種村季弘に「この映画は澁澤龍彦向きだから、ぜひ彼にみせて、何か書かせるといい」と言わせた、ブニュエルの『昼顔』。
どうやら澁澤氏にとっては期待ハズレだったそうですが、私にとってはカトリーヌ・ドヌーヴの色っぽさに、たちまち夢中になってしまった、強烈な印象を残した映画なのでした。

しかし、私が依然としてブニュエルに敬意を表せざるを得なかったのは、先にもちょっと触れておいた通り、彼の女性哲学であり、ヒロインを選択する彼の目の確かさである。今年六十二歳のブニュエル爺さんは、稀代の好色漢、サディストの面目をいささかも失ってはいなかったのである。と、褒めてもいます。
ほんっっとにその通りでして、ドヌーヴに関しては後にも言及されています。

黒眼鏡に関しての言及が実におもしろかったので、ちょっと長い引用をして、この回を終わります。

 黒眼鏡をかけた盲人は、処女作以来、彼のサディズムの重要な表現手段として、しばしばその作品に描き出されている。『忘れられたひとびと』にも、『ビリディアナ』にも、私たちは黒眼鏡の盲目の乞食を発見することができる。『アンダルシアの犬』のなかのあまりにも有名なシーン、剃刀で眼球を切断するシーンを、ここで想い出してもよかろう。視覚を奪われるということは、たぶん、ブニュエルにとって、人間的悲惨の最高のものなのであり、黒眼鏡は、その人間的悲惨の象徴なのである。
 セヴリーヌは亭主の目を避けて淫売屋へ通うために、黒いサン・グラスをかけないわけにはいかなかった。そして黒眼鏡のおかげで、彼女は肉体の陶酔を知り、堕落と汚辱を知り、最後に静かな至福の満足を知るようになった。その彼女が、自分の亭主にも同じ黒眼鏡をかけさせてやりたく思ったとしても、べつに不思議はあるまい。視覚を奪われた暗黒、そこにこそ、どうやら人間的悲惨と至福にいたる道があるのである。


 

 

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60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
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