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ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』

【ネタバレあり】

得体の知れない巨大な海の怪物の噂から始まる、この物語。
最初はラヴクラフトのような不気味さにワクワクしつつ、それが生き物ではなかったとゆーオチはどうなんだろう? と思いつつ、ノーチラス号&ネモ船長の登場に楽しく読み進んだのですが……

ジュール・ヴェルヌさん、物凄い、海・深海・魚オタクぶりを発揮します。
いやーもう、その知識たるや凄いとは思うのですが、タジタジでした。
魚の説明がはじまると、楽しかった読書が一気に苦痛に。(笑)
さかなクンみたいな人なら、目を輝かせて読むのだろうな~と思ったり。

そして、ラテン語で「誰でもない」という意味を持つ「ネモ」船長。
地上の人間を一切拒絶した謎の人物なのですが、物凄い潜水艦をつくってしまふ才能も凄すぎですが、崇高な趣味も凄い。
【解説】から引用しますが…

この船の広間と図書館は、科学技術の粋を集めた潜水艦に似つかわしくない、きわめて不可思議な雰囲気をたたえている。そこには、海から集められた稀有な産物ばかりでなく、美術館を飾るにふさわしい芸術作品が所狭しと並べられ、自然科学から人文科学まで (経済を除いて) あらゆる分野の書物が収められている。

と言うことです。
しかし、どんなに孤独な人も、自分のコレクションの共有も何も出来ないというのは、実に実に虚しいのではないか、と思います。自慢とかしたいですよねー。
絵画なんて、ダヴィンチ、テッツィアーノ、ムリーリョ、ドラクロワ、アングルなどなどの名品がドッサリなのですよ! これらを深海にもぐらせているのは犯罪ではないかとまで思ってしまいますね。世界中の人に見せるべきだし…と、なんだかもやもやした気持ちになってしまいます。
朝比奈美知子さんの【解説】で、この事を的確に表現されています。以下引用。

彼がいかなる世界を駆けめぐり、いかに貴重な秘密を集め、どれほど深く広範な知を獲得しようとも、それらはけっして外に伝達されることがない。この近代のバベルは、蓄積される知の巨大な広がりと、決定的な閉鎖性、他者の不在性という矛盾を孕んでいるのである。

魚の説明にたじたじしつつ、時々何か動きがあると楽しく読み進む、という感じで読了しましたが、謎の人物ネモ船長、ラスト近くに敵が登場したり、どうやらこの敵によって家族も何もかも失ったらしいと言う事は何となく分かるものの、詳しい事は何も分からず、消息さえも不明です。
【解説】を読むと、『海底二万里』の続編としての性格をもつ『神秘の島』で、ネモ船長の消息があきらかにされるとか。うわっやっと読了したと思ったらコレも読まなきゃじゃん!
(うわっ3冊もあるのかあ)

  

 

しかしシンドイ部分もある読書でしたが、そのシンドイ部分 (魚や海の生き物の物凄く詳しい説明等) も含めて、凄い小説だと思います。

岩波文庫 朝比奈美知子・訳 で読了しました。
この本、訳注が本文の中に入っていたので、頁を行ったり来たりのわずらわしい作業がなく、実に有り難かったです。

【追記】
今NHKで再放送されいてる『ふしぎの海のナディア』は、この小説が元になっているという事で、それと大好きなギタリストで実に優れたメロディーメーカーでもあるマイケル・シェンカー (MSG) の曲に『キャプテン・ネモ』というのがある事から、矢も楯もたまらず読み始めたのですが、この小説に出てくるのはオッサンオンリーだし、ナディアとはほとんど共通点がありませんでした。(笑)
それにしても、登場人物がオッサンオンリーで、これだけおもしろいというのも凄いかも〜

 

  











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ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
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