◆ドストエフスキーの獄中体験と加賀乙彦の死刑囚との接触より◆
精神科医として死刑囚と接してきた加賀氏ならではの、ドストエフスキー小説の理解の仕方には唸らされます。
『罪と罰』のラスコーリニコフの殺人シーンの心理描写は、すっっごくリアルでドキドキして読んだ記憶があります。
以下p.30より引用。
殺人行為の直前、全身の脱力感におそわれるというドストエフスキイの洞察は驚くべき真実の発見である。そこには精神と肉体の麻痺、すなわち仮の死が見出されている。この仮死を通過しなければ、殺人という非日常的な行為は成就しない。とすればこの行為の前にラスコーリニコフが死刑囚のように濃縮された時間を体験したのもうべなるかなである。(江川卓訳↓がお薦め。)
罪と罰(上)岩波文庫 江川卓・訳
罪と罰(中)岩波文庫 江川卓・訳
罪と罰(下)岩波文庫 江川卓・訳
罪と罰この後、加賀氏が実際に会った殺人犯の例へと続くので、是非一読を。
ドストエフスキイ次も、加賀乙彦ならではの見解で、とても興味深いです。p.37より引用。
死刑囚たちの示す精神変調は、その困難な状況への彼らなりの必死の抵抗だとみなされる。爆発反応、ヒステリー、妄想反応は、言ってみればイッポリトの陥っている状態の極端なタイプなのである。自分の生命が、明日の朝、不意に断ち切られるかも知れぬという時、人間はおのれを正視することができず何とか逃げ道を探す。いくら探しても逃げ道がない場合、人間はおのれ自身を変化させることで身を守る、つまり病気に逃避するのである。白痴(上巻)改版
白痴(下巻)改版
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