実はこの事件、タイミング悪く外国にでも行ってたのか、別の事におわれてニュースも新聞も見ていなかったのかわからんのですが、ほとんど記憶にないのでありまして、当時は被害者のヌード写真まで出回ったというのにはビックリです。
何年も経ってから、飲み会で話題になったりして興味を覚えた訳ですが、そのまま忘れていた時に、同僚がこの事件をモチーフにしたという小説
『グロテスク』を貸してくれたという訳です。
この小説は、私はあまり良いと思わなかったものの、東電OL殺人事件については俄然興味を持ち、佐野眞一のノンフィクションを図書館で借りました。
読んでみたら、興味のあるのは被害者に関してなのに、大半は容疑者のネパール人の話でした。それから、デジャヴがどうだとか、この人のネパール行きの苦労話だとか、どうでもいい無駄が多くて、ちとイラつきました。繰り返しも多いです。
それから、結構感情的と言うか・・・ノンフィクションは、冷静に客観的に淡々と書かれている方が説得力があると思うのですが。変に美化する所が感じられます。以下の文など。それは違うんでないかと・・・
手をかえ品をかえのセックス産業が横行する世の中にあって、命を張って客を直引きする泰子の立ちんぼ姿は、コンビニ感覚のセックスに比べ、神々しくさえみえる。それから、この本を読んでいるのは圧倒的に女性が多いそうで、自分と同一視している方が多いとこの人は思っているようなのですが、そうなのかなあ?という感じがします。
何が興味を惹くかというと、やはり昼はエリートOL、夜は娼婦という、ブニュエルの『昼顔』のような二重性ではないでしょうか。

それから、これは、マスコミに報じられた彼女の行動の一端ですが、以下引用。
コンビニエンスストアで百円玉を千円札に、千円札を一万円札に「逆両替」し、井の頭線の終電で菓子パンを食い散らかし、円山町の暗がりで立ち小便をする。すんごい潔癖性で細かいながらも、ある面では羞恥心などが麻痺しているとしか思えない彼女の大胆な行動にも興味を惹かれます。
でも立ちションって女性には無理じゃないっすか??路上で放尿って事なんでしょうけど。「逆両替」は、空き瓶を集めて換金していたというのだからスゴイです。
その倹約ぶりは、テレビの「極めつけ!倹約生活」みたいな番組にでも出られそうな感じ・・・。以下引用。
彼女は自分の方から「客」に電話をかけるとき、必ずコレクトコールでかけてきた。「客」がその理由を聞くと彼女は、「不在の場合、留守番電話になるので十円損する」と顔色一つかえずに答えた。彼女の母親というのが、どうしようもないお嬢さんで (洗い物もろくに出来ないとかゆー話です。真偽はわかりません。)、尊敬する父親は大学生の頃に亡くなり、一家をささえていかなきゃと思ったという事ですが、収入は充分にあったという話です。年収一千万とかですぜ。
「お金を貯める」という行為も、強迫神経症的なものから来ているのではないかと思います。百円が千円になり、千円が一万円になっていく様がおもしろいのかもしれません。(体重が減っていくのがおもしろくなってしまう拒食症のように) 趣味のようにさえ思えました。何か思い込むと、それに縛られるという事は、自分もたまにあるので分ります。何かトラウマ的なものも、あるのかもしれません。
売春行為のきっかけは分りませんが、これも何か強迫神経症的なものを感じます。毎晩4人というノルマを決め、必ず最終電車で帰るという・・・。(哲学者カントのような、きちんとした性格だ…)
そして、セックスを好きじゃなかったという彼女の、相手かまわずに仕事をする、その行為も、どこか麻痺させたような面を感じます。
不思議と感情的な叫びのようなものは見えてこないんです。そういうのを無理矢理つくりだそうと作者はしているように思います。
ただ、麻痺するまでには、そういう叫び以上の心理的苦痛が、すっっごくあったと思います。拒食症で入院までしたそうですし。本当に痛々しく気の毒です。
クリックよろぴくー。

スポンサーサイト
テーマ : ノンフィクション
ジャンル : 本・雑誌