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パゾリーニ『生命ある若者』その3 2007.1.25

前回予告したように、雲や空の描写が実に印象的でしたので、いくつか引用します。

 白み始めていた。家々の屋根の上では、風に翻弄され痛めつけられて雲が縞の模様を描いて見せていた。風はあの高い空の上では、世界ができたばかりのころと変りなく、今も同じように自由に吹きぬけているに違いない。しかしこの地上では、壁にたれさがったポスターをいたぶってみるか、紙くずを飛ばして穴ぼこだらけの歩道の縁まで、あるいは電車の線路にそって引きずって行くばかりだ。
 どこかの広場とか、墓場のように静まり返った陸橋の上とか、あるいは五、六階ぐらいの高さに足場を組んだ工事場と汚らしい草原のほかには何もない建築用地とかで、家並みが間遠になると、空がすっかり見えた。一面に無数の小さな雲が虫喰いの痕か吹き出物のようにぶつぶつと空を覆っていて、それはさまざまな形と色をしながら、ずっとむこうの蒼白く不規則にたち並ぶ <<摩天楼>> の上までおりて来ていた。黒い田螺や黄ばんだ貽貝、青みがかった口髭もあれば、卵の黄身の色をした痰壷もあった。そしてむこうには、まるで極地の川のようにまっさおな、澄みきった、ガラスみたいな空が幾筋にも伸びていて、そのさらにむこうには、煉獄の山のように見えるまっ白な、もくもくと巨大でさわやかな入道雲がそびえ立っていた。


 水で薄めたインクのように汚ならしい灰色の雨雲が、広場の空間を通して家々の屋根のむこうに見えるひとすじの空のあいだに広がっていた。雲が描いたあの壮麗な破滅の姿は今、色あせて行き、そしてまもなくこの汚濁の色のなかに呑みこまれて行く。鋼鉄のように照り輝いていた美しいまっ白な入道雲は、ぼろぼろにちぎれちぎれて、今はそれもまた泥のなかに消えて行く白雲のように消えていた。




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ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
峰不二子、デボラ・ハリー、ウエンディー・O・ウィリアムスが憧れの人!

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