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『失われた時を求めて9 第5篇 囚われの女 I 』その7 2008.12.14

*ネタバレあり

もうココまで読んだら目的を果たしたようなものなんで、でもココまで読んだのだから、なんとか最後まで読むゾと頑張っている訳でして。
ひっじょおに重要な、ベルゴットの死のシーンです。
オランダでフェルメールの「デルフトの眺望」を見たということは、自分にとって凄い出来事でした。(こちらを。)
その事が、この長大な小説を再読するハメに・・・・いや、きっかけになった訳でして、そのベルゴットの死のシーンを、長い長い引用をしちゃいます。

 彼が死んだときの状況は次のとおりである。軽い尿毒症の発作のために、彼は安静を命じられていた。ところが某批評家がフェルメールの「デルフトの眺望」(オランダ展のためにハーグの美術館から貸与されたもの)、彼の大好きな、そして隅々まで知っているはずのこの「デルフトの眺望」のなかに、黄色い小さな壁が実に見事に描かれており (それが彼には思い出せなかった)、その壁だけをじっと眺めるとすばらしい中国の美術品のように自足した美を備えていると書いていたので、ベルゴットはジャガイモを少し食べてから外出して、この展覧会場に入った。階段を数段上がったとたんに、彼は目まいに襲われた。彼は多くの絵の前を通りすぎながら、どれもこれもわざとらしい、かさかさした無用な芸術だという印象を受け、ヴェネツィアの宮殿 (パラツツオ) を吹きぬける風や太陽、いやそれどころか海辺の質素な家を吹きぬける風や太陽の光でさえ、これよりずっとましだと考えた。ようやくフェルメールの前に来た。彼の記憶ではもっとはなやかな、彼の知っているあらゆるものとかけ離れた絵のはずだったが、それでも批評家の文章のおかげではじめて青い小さな人物たちに気づき、砂がバラ色であることを認め、最後にちょっぴり顔を出している黄色い壁の貴重なマチエールを発見した。彼の目まいは徐々に増大した。彼は目をすえて、ちょうど子供が黄色い蝶をとらえようと目をこらすように、この貴重な小さな壁を眺めた。「こんなふうに書かなくちゃいけなかったんだ」と彼はつぶやいた、「おれの最近の作品はみんなかさかさしすぎている。この小さな黄色い壁のように絵具をいくつも積み上げて、文章 (フレーズ) そのものを価値あるものにしなければいけなかったんだ」。しかしながら、ひどい目まいは彼をとらえて離さなかった。彼の脳裏には、天上の秤の一方の皿にのっている自分の生命があらわれ、それに対してもう一方の皿には黄色にみごとに描かれた小さな壁がのっていた。彼は自分が軽卒にも、後者のために生命を犠牲にしたように感じた。彼は考えた、「それにしても、夕刊の三面記事に、展覧会で起こった事件などと書かれたくないもんだ」。彼は心に繰り返した、「庇のついた黄色い小さな壁、黄色い小さな壁」。そうつぶやきながら彼は半円を描いているソファにくずれ落ちた。



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ハードロックギタリストで作詞作曲家(まだアマチュアだけどな)吉乃黄櫻の読書ブログ。
60~70年代のロック、サイレント~60年代あたりの映画、フランス・ロシア・ドイツなどの古典文学が好きな懐古趣味人。
西武ライオンズファン。
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